Little Miss Sunshine

 

今年のサンダンス映画祭で絶賛された、崩壊家族を描いたブラックコメディ。約40度という異常な暑さが続くニューヨークの、平日昼間の映画館は、幅広い年齢と性別の観客で満員、家族全員引き連れてきたような観客もいた。

大うけに受けていたが、私は鬱気味だったせいもあり、リアルすぎてあまり笑えなかった。物事がうまくいかない状態が笑いに昇華されていないからか、個人的な経験のせいで他人の不幸を笑えないからなのか、私には判断不可能だ。とはいえ、題名になっているクライマックスの、お子様用ミスコン風刺の部分は文句なしにおかしい。作品の意図した笑いを笑いとして受け止められなくても、ラストまでには各登場人物に対してすっかり共感できているため、壊れかけていた家族がまとまっていくのは感動的だ。

ニューメキシコ州アルバカーキに住む、働く主婦シェリル(トニ・コレット)の家族は、彼女以外変人ぞろい。ポジティブ・シンキング事業に金をつぎ込む夫、パイロットになる願かけのために口をきかず、ニーチェを愛読する人嫌いのティーンエイジャーの息子、ミスコン大好きな7歳の娘はジョンベネとは似ても似つかないぽっちゃりのトンボ眼鏡、義父はヘロインを常用し、弟は自殺未遂して同居することになる。娘がミスコンの予選に通り、フォルクスワーゲンのバスに乗って、一家はカリフォルニアへと旅立つが、行く手にあるのは波乱ばかり。。。

突拍子もないことばかり起きるが、自分自身の体験に近いかどうかにかかわらず、他人事と思えないことばかりだった。それを、おかしいと思うかどうかは観客しだいなのだろうか。例えば、いずれ分かることだから、と弟の自殺を幼い娘に説明するくだりは笑いを狙っていて、実際に受けていたが、私には笑えなかった。

いかにもありそうなためにかえって嘘っぽく感じられる部分もほんの少しだけあったが、監督のジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリスは、これが初作品とは思えないほど全体的にうまくできているし、演技も共感が持て、あざとくなくうまい。個人的に一番共感できるのは他人と距離を置く息子(ポール・ダノ)と弟(「The 40 Year   Old Virgin」のスティーブ・キャレル)だが、口は悪いが孫思いの祖父(アラン・アーキン)もかなりおいしい役。場違いな場所に場違いな魂を抱えて悩む人たちの集まりである家族が不器用にふれあっていく姿は、自分の年齢に近い登場人物に感情移入しやすいのはもちろんだが、年齢を超えて共感を呼ぶ。