ギリシャへの旅 Part3

Day7 :ミコノス–アテネ
ホテルで朝食後チェックアウト。荷物をホテルに置いて考古学博物館まで歩く。またもや猫たち!






リトル・ベニス裏のタベルナで昼食。シーフードリゾット。

ホテルに戻り、港まで車で送ってもらう。アテネ行2時15分発のブルースター・フェリーに乗船。もやい綱?を外すオジサンは、どこからともなくオート三輪で現れ、役目がすむとすぐに去っていった。一日何をしてるのか気になる人。

6時間という長さが気にならない快適なクルーズだった。甲板には心地よい風が吹き、美しい海と島が見える。乗り物に弱い私でも全く問題。ウゾー2杯とビールを飲んで昼寝。起き抜けに、エドに誘われて夕陽を見る。サントリーニでの不運続きがトラウマとなっていたエドも満足の、美しい夕陽だった。


アテネの港からセントラル・アテネ・ホテルまでタクシー。チップ込みで約20€。約30分。チェックイン後、ホテルのあるプラカ地区を歩く。アクロポリスがライトアップされている。ストリート・ミュージシャンがギリシャ音楽を演奏。モナスティラーキ広場からすぐの、ものすごくにぎわっている通りのものすごく流行っているタベルナBairaktaris で夕食。ミネストローネ風スープ、ミートボール、ナスとポテトのグリル。食後にTsipouro のショットがサービスで出てくる。ウォッカの優に2倍はありそうな強さ!

ホテルまで歩いて戻る。アテネの猫にこんばんは。



Day 8 : アテネ
ホテルで朝食。アクロポリスへ向かう途中、プラカでウィンドウショッピング。Ikonomouジュエリーショップでハンドメイドのクロシェ編みピアス(10ユーロ)とネックレス(25ユーロ)。

自家製の酒を飲ませる酒屋Brettosでマンゴのリキュール。魔法のような色使いのディスプレイ。

アクロポリスのふもとに位置する、アテネの中の島のようなAnafiotika 地区で、猫とともに幸せに迷う。


やっとアクロポリスに到着。気温は30度を超え、快晴、日陰なし。写真通りの遺跡に多くの人たちと工事現場を足したのがアクロポリスの眺めだったが、すべて見通せる高台という位置は、神話だけでなく、戦略面からも重要だったんだなあと実感。

アクロポリス博物館の構造は優れもの。遺跡の上に建てられていて、入り口からは遺跡が見下ろせる。展示物では、レリーフが興味深い。

暑さでぐったり。博物館のカフェでランチ。ミネストローネ風の野菜と豆のスープ、ぬるいが美味しい。燻製ニシンとオリーブ、パン付きで8.6ユーロ。

タクシーでホテルに戻ろうとしたところ、アドリアヌス門とゼウス神殿が目に入り、立ち寄る。両方とも2世紀に建てられた。

神殿は、大きさ、デザイン、夕陽の当たり方、人の少なさ(中国人の団体が嵐のように立ち去ったので)など全てが、アクロポリスより確かに古い感じがした。アクロポリスとリカヴィトスの丘が神殿と並んで小さく見えるのも、世界の中心気分を味わえる。まさにパワースポットで、暑い中を上り下りして歩き回った疲れが消えた。

ホテルまでタクシー。10ユーロ。近場なのに高い!反対車線だったので乗車地点まで戻ってから大回りとなった。チップなし。チップは常に必須ではないと分かってきたので。シャワーを浴び、近所の酒屋で買ったギリシャの缶ビールを飲む。

ホテル近くのNoodle Barで夕食。豚肉入り(チャーシューではない)ラーメンは辛くないトムヤムクンのようなスープに、パタイ状の麺。ラーメンではないが悪くない味。タイのチャーハンは、アメリカで食べるチャイニーズのチャーハンみたい。どちらも6〜7ユーロ。

パンドロス通りでウィンドウショッピング。 ギリシャの特産品であるサンダルやバッグなど革製品を買いたいが、デザインがいまいち。金曜夜でにぎわうモナスティラーキ広場のカフェでワイン。この広場はニューヨークのユニオンスクエアみたいな場所。複数の地下鉄が通っていて、商業地区の真ん中にあり、果物の屋台も出ている。どこから人がやってくるのかと思うほど、地元の人と観光客が一杯。

古代アゴラの周りをそぞろ歩く。アクセサリーの屋台が沢山。ホテルまで戻る途中に迷い、Adrianou (?)沿いに、礼拝中の小さいギリシャ正教会を見つける。アカペラで男性数人のみの聖歌は味があり、ずっと聞いていたくなる。天井までアイコンやフレスコで埋め尽くされている。明るいところで見たらどうか分からないが、暗い中でお香の匂いと聖歌を聞きながらだとありがたい感じ。何度か道を聞きながらホテルへ。乾いた夏の夜のような天気なので快適な散歩。

ホテルでは定員3名のエレベーターに乗れず右往左往しつつも、ついに屋上のラウンジから、ライトアップされたアクロポリスを見る。真昼間の平坦な光景よりも情緒がある。おあつらえ向きに三日月も出ていた。ウゾーと煙草。



Day 9: アテネ
ホテルで朝食。

モナスティラーキ広場周辺

古代アゴラに向かう途中、モナスティラーキでフリーマーケットとアンティークショップが固まっている場所を発見。旅行で週末に都市に滞在したら、フリマはチェックするようにしているので、偶然発見してうれしい。アゴラへの行き方と人に尋ねるかどうかで小さな口論。フリマでは30分別行動。

フリマとショップの品物はジャンクか高そうで、見るには楽しいが買い物欲はわかない。人を見ている方が楽しい。

アンティークプリントの店の前で、Kefailos(?)という名の雄猫が私の膝に座って離れない。店主に、商売の邪魔してごめんなさいと言ったが、「ビューティフル!」とにこにこしている。隣の店の人に、店主と猫との写真を撮ってもらう。店主に「家族みたいだね」と言ったら、「そうだね」とほほ笑む。

エドアゴラ入り口を発見。彼はホットドッグの昼食。完璧にグリルされて、NYの3倍くらい大きいのに、たったの1.5ユーロ。さらに猫と出会う。フリマというか、地元向けの泥棒市のような、狭く短い通りにあるマーケットの人たちが、猫に昼ご飯を与えているところに遭遇。

アゴラ。またもや、暑い中の遺跡。ヘバイストス神殿はアクロポリスより風情がある。 古いレリーフに草が生え、鳩が休んでいる。

モナスティラーキ広場に戻り、パン屋でピザパン(うまい!)とアムステル・ビール。黒Tシャツの若者たちが広場の一角に集まり、横断幕を張り、ポップロックを流しながら、集会の準備をしている。男のほうが女より多かったが、それでも女の割合は、ギリシャで見た他の人混みよりも多い気がした。警官が周りに数人配置されていたが、不穏な感じはなし。チラシを受け取り、後で友人のギリシャ人に読んでもらったところ、彼らはアナーキストであることが分かった。

モナスティラーキから地下鉄に乗り、ビクトリー駅で下車、国立考古学博物館へ。地下鉄は使いやすい。
博物館の収集品は彫像、古代の物、古代エジプト(メトロポリタンに匹敵するかも!)関係が優れている。


紀元前約510年作の、犬と猫のけんかを描いたレリーフ

巨大なポセイドン像の前で、彫像のポーズを真似して写真を撮っていたら、博物館スタッフに“No more” と注意される。伝統を侮辱する行為に見えたのかもしれない。博物館カフェで、カプチーノ有機ゴマのスイーツ。

地下鉄でモナスティラーキに戻る。ホテルに戻る途中、工事中のミトロポレオス大聖堂近くで、クリーミーなフローズンギリシャヨーグルトにはちみつとナッツをのせたのを食べる。暑い中歩き回ったので、甘さと酸味がおいしい。ホテル近くで偶然見つけた、1930年からあるパティスリーで、ピスタチオとアーモンドのスイーツを職場へのお土産に購入。

ホテルのあるApolonos通りは、19世紀、アールヌーボー、モダンなどの異なる様式が混在。ここプラカ地区は、歴史的建造物の保存地区のはずだが、この規制の緩い感じはギリシャ風?



屋上で、冷水のジャグジー (ホテルによると、そういうものらしい)に入り、日光浴。アクロポリスの見納め。

夕食。「地球の歩き方」に載っていた、ホテル近くのタベルナ2軒は、インド料理と今風ギリシャ料理店になっていた。空腹を抱えて歩き回り、流行っている気軽なギリシャ料理店に入る。サービスのTsipouroショットとオリーブが最初に出てくる。グリークサラダは、目からうろこの美味しさ。NYで食べるのと全く違う。とても新鮮なトマト、キュウリ、赤ピーマン、酸味がきつすぎず素材の味を引き立てる、それ自体が主張しないドレッシング。

エドの頼んだズッキーニパスタは美味。私のスズキグリルは今一つ。

シンタグマ広場近くの、アテネ最大という本屋に向かったが、すでに閉まっていた。ホテルに戻り、パティスリーで買ったバクラヴァとタンジェリンのスイーツとカプチーノ。荷造り。少し眠る。最後の煙草。日記を書く。

Day 10: アテネ-ロンドン-NY



まとめ

オフシーズンのサントリーニとミコノスは、サントリーニのフィラとイアを除いてのんびりしていたが、アテネは人が多く活気があり、経済が破たんした国には見えなかった。一度だけ見た集会(抗議とも言えない程度)やグラフィティの多さ以外は。破綻で食い物にされているかと思ったら、外国資本が思ったより少なく、地元資本が割とがんばっている印象。例えば、ビールでどこでも買えるのは、国産2−3種に外資のAmstelとHeineken。世界の他の都市同様に、H&M, Zara, Sephora, Footlocker, Addidasなどに加えて高級ブランドも目に付くが、マクドナルドやスタバは案外少ない。でも、革製品などのギリシア製品を買いたいと思っても、手ごろな値段で良いデザインのものがない。


ギリシャは多額の債務を抱えながら、外国製品を買うが、観光と農業、船舶以外はほとんど産業がない。これは、破たんした理由の一部を説明している。ギリシャ神話では、アテナがオリーブを作り、ポセイドンが馬を作った。神々は、オリーブのほうが人間に有益と判断して、アテナにアテネを与えた。ギリシャはその始まりからすでに、経済破たんに向かって進んでいたかのようだ。馬は車でありハードパワーで、オリーブはソフトパワーを意味する。破綻のさらなる要因として、公務員や年金の高待遇、脱税が指摘されているが、旅行者が目に見えてわかるのは、ハードパワーが発達しきっておらず、ソフトパワーが衰退していることだ。他のEU諸国と異なり、世界的に知られている企業もなく、世界的に著名な文化人も少なく、ソフトウェア面での発展も聞かない。前述のように、手ごろな値段でよいデザインのギリシャ製品も見当たらない。アテネ最大の本屋でさえ、土曜8時半ごろ閉まっていた。


ギリシャは、女性の社会進出が遅れている男尊女卑的社会のように見える。島でもアテネでも女性が働いていないわけではないが、外に出ている女が男より少ない。男たちは朝からいちゃいちゃとたむろしているが(58歳から年金が受給できると聞いて納得)、家族連れの女はいても、女同士やカップルの数が比較的少ない気がする。私が、オイシイ顔のオヤジたちについ目が行ってしまうせいもあるかもしれないが。。。NY在住のギリシャ人の友達によると、ギリシャでは職場で表立った男女差別があるわけではなく、親や祖父母が子どもの面倒を見てくれたり、不法移民の安価なベビーシッターもいるため、子どもがいても仕事を続けることは、日本よりもはるかに容易だという。
途上国で見られるような子どもの物乞いも、観光客の多い場所で目に付いた。ジプシーらしいアコーディオン演奏の子どもが多い。


EUの一部とはいえ、ドイツやフランスほどの先進国でない例も多く見られる。一番目に付くのはインフラ整備の遅れで、島だけでなくアテネの中心部でさえ電線が地上にあり、貴重な観光資源である景観を損なっている。公共の場所やあまり高くないホテルのトイレは紙が流せず、備え付けのゴミ箱に入れる方式だ(中国もそうだった)。サントリーニのホテルのシャワーは10分前にスイッチを入れる方式だが、30秒ほどしか湯が出なかった。


島の土産物店の人たちはあまりしゃべらないが人が良く、頼まなくても、一個1ユーロのオリーブオイル石鹸を一つづつギフト用の袋に入れてくれる。サービスは丁寧だが比較的遅く、効率的でない印象。もちろん、島の魅力は効率ではなくのんびりしたペースにあり、アテネのペースは比較的早く、人々の顔も比較的厳しいが。とはいえ、アテネ中心部のビジネスホテルのエレベーターが3人乗りというのはいただけない。せめて4人にしないと、二人連れが半端になってしまう。観光に携わる人々の英語は、殆どの若者は達者で、年配の人もレベルの差はあれどしゃべるが、人によっては、ドイツ人などに比べて、第二外国語をしゃべっていることが強く感じられる。また、営業用の笑顔の写真をことわって撮るのは歓迎だが、街の人や店の人たちを許可なしに撮影しようとすると、強い拒否に会うこともあった。観光で生きている国の線の引き方を見た。


ギリシャは観光で成り立っているだけあって、名所もそうでない場所も絵になるところだらけで、訪れるには素晴らしい国だ。素晴らしい眺めや遺跡が多くあり、人懐こく個性豊かなたくさんの猫たちがいて、それらの猫と風景が一体化している。全般的に人々は親切だし、食べ物もおいしい。ギリシャの歴史と現在の世界の中での位置―ひいては日本やアメリカについても―をも多く考えさせられる旅でもあった。ミコノスには9月に、一人でもアパートを1週間ほど借りて、毎朝猫たちに「カリメーラ」と言って過ごしたいと思っている(終)