Harry Potter and the Goblet of Fire

“It sucked!(ひでえ!)”

公開2日目、土曜日夜のユニオンスクエアの上映で、エンドクレジットが出た瞬間、観客の一人が叫んだ言葉だ。拍手したのは数人ぐらいでまばら、私を含めた観客の殆どは、2時間半の上演で1時すぎの終演時には疲れ果て、そうだ!と叫び返す気力はないものの、沈黙で彼に同意したように見うけられた(以下ネタばれ含む)。

悪い魔法使いのボルデモートが復活し、それに対応して、ハリーと友人たちも思春期という暗黒に突入、という図式だが、ティーンエイジャーそのままに不恰好な映画。ちなみに、時間が遅いせいか、場内にいる子供は二人だけで、大半の客が20歳より上でした。

何がひどいって、大好きなスネイプ教授(アラン・リックマン)の出番が、話の展開に重要なエピソードを含め、ことごとく削られていたのには憤慨したけど、それだけじゃない。また、原作ファン心理を悪用した紙芝居を作ってくれた。700ページ以上の原作を2時間半の映画にするには、大胆な省略と変化があって当然だけど、登場人物の性格設定を変えてしまうのはいただけない。

ゴブレットにハリーの名前を発見し、ハリーに詰め寄るダンブルドア、ロンとハリーの頭をどつくスネイプ(彼のいじめ方は、もっと陰湿でねちねちしてるはず)、ダンスを教えるマクコナガル、どれも原作の設定ではありえない。しかも、後の二つの例は、話の展開に重要なエピソードを削ってまで、映画版のために挿入されたエピソード。ダークな話の展開とのバランスを考え、笑いを取るためだと思うが、人物設定とも、話の展開ともかみ合ってないその場限りの笑いで、底が浅いよ。出演時間を削るなら、大人のファンにだけ分かる微妙な表情とかで、演じ分けてほしいもんです。リックマンとかマギー・スミスとか、きちんと演技ができる役者をせっかく使ってるんだから、使いこなしてよ。

ダニエル・ラドクリフも、相変わらず主人公としての魅力がない。普通なのになぜかすごい魔法が使えたり、義侠心がやたらとあるのが、原作だと納得いくんだけど、映画では唐突に感じられる。

私がひそかに、ハリー・ポッターの法則と呼んでいるのは、キャスティングの不思議さ。例外はあるが、原作でグッドルッキングな人物は映画では不細工で、原作で醜いとされてる人物がけっこう格好良かったりする(前者の例はシリウスで、後者はスネイプ)。人間離れして可愛いはずのフラーも、ハリーが片思いするチョウも、ハリーのライバルのセドリックも可愛くない!だから、セドリックが死んでも、あまりかわいそうじゃない。故に、原作では、同時多発テロを予言していたかのようにも読める、彼の死を悼むダンブルドアのスピーチも、重みなし。シリウスと言えば、ほとんど出番がなく、もっと長い5巻で、どうやってつじつまつけるのか心配。

レイフ・ファインズが、復活したボルデモートをどう演じるか楽しみだったが、うまい役者なので、さすがだった。でも欲を言えば、もっと背筋凍るようなカリスマ的怖さがほしいな。彼のフェミニンな部分は、ソフトでいながら怖い、という役柄にはまってたけれど。

明らかに、原作を読んでる人にのみ焦点を当てて、今後の話の展開に重要な説明を省略してある。それはそれで、商売が成り立つから、その戦略自体は納得がいく。でも、それなら原作のファンを満足させる作品を作ってくれい!特にバーティJrに関する部分は、謎解き要素が少なくてつまらないし、説明抜きにほっておかれている事柄もたくさん。かといって、アクション場面がすごくエキサイティング、ってこともないから、原作を知らない人には、一緒に行った夫のように、退屈してしまうかも。

でも、評判は良いんです、この作品。アメリカの映画評がまとめて読めるサイト
http://www.rottentomatoes.com/ では88%が誉めてる。ファンサイトでも、殆どがほめてる。
不思議… 見た人感想聞かせてください。

原作を読んでない人に不親切なのに加え、ほんとに小さな子には見せないほうがいいかもしれない。けっこうグロイし、人死ぬしね。アメリカでは、シリーズ中初めて、PG13(13歳以下は保護者の同伴が必要)の年齢指定がつきました。