ゲームの規則 Le Regle de Jeu

ジャン・ルノワール監督の映画史上に残る傑作が、デジタル修復されたというので、近所の名画座Film Forumに見に行った。社交界の男女と召使たちの恋愛模様が、階上階下で展開される。登場人物の描き分けがきちんと演出されていて、別々に展開していた物語が最後には一つに重なる様子がスムースに描かれている。そして何よりも、「古典的な恋愛喜劇」の一言で片付けられるあらすじにもかかわらず、言葉で表せない映像ならではの情報や雰囲気が伝わってくる、映画らしい映画。すごく好き!とは思わなかったけど、なぜこの作品がクラシックなのか納得した。

今でもそのまま使える気のきいた台詞(「製薬会社の広告も政府も映画も嘘をつくんだから、われわれ普通の人間だって嘘をついていいじゃないか」)は場内の笑いを誘い、ドタバタ不倫喜劇も階級の違いも、さらりと軽快に描かれている大人の映画でもある。メイドを中心とする三角関係が巻き起こす追いかけっこは、いかにも古典的だが、活気があって楽しく、古臭く見えない。ちなみに衣装はシャネルが担当。

郊外で行われる狩では、逃げるウサギがクローズアップで映され、すぐに撃たれて死ぬ。足がぴくぴく動いている。最後には、不倫はしてもいいが真剣にならない、という「ゲームの規則」を知らない、小動物のように傷つきやすい若者が死ぬ。人間も動物と同じ生命の輪の中にいることを感じさせるクローズアップと、狩られるものとしての子供を描いた「狩人の夜」を思わせた。