Talladega Nights : The Ballad of Ricky Bobby タラデガ・ナイツ


ディズニーの「カーズ」と同じ今年夏の公開で、カーレースを題材としているが、こちらの方が偽善的でなく、現実を反映していて面白い。ウィル・フェレルがパンツ一丁でレーストラックを走り回ったりするおバカ映画だが、映画制作を含めた企業社会アメリカを風刺したシャープさもある。

レース事故をきっかけに走れなくなったNascarの人気レーサー、リッキー・ボビー(フェレル)が、家族の理解と愛により立ち直る物語。実際には、くそガキをしつけなおしてくれるおばあちゃんや、スランプからの立ち直りを助けてくれる父親は絶滅寸前であり、希望的観測を含めたファンタジーではあるのだが。

フェレルは企業ロゴで覆われたレースカーだけでなく、ドミノ・ピザとKFC、コカ・コーラを常食、家族の大切さを認識する場所もファミリーレストラン・チェーンのアップルビーズで(デニーズよりはましな味で「グルメ・レストラン」と呼ばれ、グルメなフランス文化との対比ギャグになっている)全編が同チェーンの長いコマーシャルのようだ。

ライバルであるゲイのフランス人F1レーサー(サシャ・バロン・コーエン)とに体現される、アメリカ南部とフランスのステレオタイプも、二人のキャラクターおよび物語の文脈の一部として生きている。最初、キャラクター的には一番強烈なコーエン(ボラートでなく、ちゃんとフランス人に見える!)の映画のように思わせておいて、主人公の人間性や家族の話に持っていく構成もバランスが取れている。アメリカを代表するフェレルは、たなびく星条旗をバックに回復し、観客を元気にさせてくれる。が、そのいかにも愛国的な態度を自ら笑っており、古典的な家族愛コメディの形式でありながら、いまどきの大人の笑いになっている。保守とリベラルの二極化が進んでいるブッシュ政権下のアメリカで、そのどちらかに分類しきれない価値観を持った映画ともいえる。