Tenacious D/Marie Antoinette

 

Tenacious D : The Pick of Destiny
ジャック・ブラックと相棒のカイル・ガスが、フォーク・メタル・デュオをケーブルTVで演じ、B級低調な笑いで番組キャンセル後もカルト的人気を得たコメディの映画化。

ロックスターを目指してサンフランシスコに来たJB(ブラック)は、KG(ガス)と出会い、デュオTenacious Dを結成するが、スターへの道は遠い。が、ある日、ロックスターは共通のギターピックを使っていることを発見し、展示されている運命のピックを手に入れようと、ロック博物館に忍び込むが…

個々のギャグはTV版のスキットと同レベルの面白さだが、1時間半の映画に足りるほど脚本もギャグもスケールアップされていないので、彼らの熱狂的なファン以外にはしんどい。子供っぽいユーモアの「Dazed and Confused」を大学生が楽しむ時のように、ビール&ポットでハイになりながら仲間と見るには良い作品だが。脚本も共演の子供たちも良かった「スクール・オブ・ロック」と比べ、ジャック・ブラックの守備範囲の狭さが見えてしまう。TV放映終了は2000年で、映画化のタイミングも遅すぎた。

Marie Antoinette マリー・アントワネット
歴史も、焦点を当てたはずのマリー・アントワネット個人の感情も、どちらもきちんと描かれておらず、中身がない。ベルサイユ・ロケに豪華な衣装とインテリアなど目の保養(英語ではeye candyと言う)としては良いが、もう少し内容がないと、これも見ててしんどかった。歴史的背景の説明があまりないので、マリー・アントワネット&フランス革命について知らない人には、話が分からないかも。「ベルばら」が読みたいと思いながら、頭の中で物語と登場人物を質量とも補足していた。カースティン・ダンストは可愛いけど、役ではなく彼女自身の魅力。

ルイ16世となる夫は子作りに興味がなく、周りからは子を産めとのプレッシャーがきつく、お洒落と甘いものやパーティーに走る場面では、バウ・ワウ・ワウの文字通り「I want Candy」が使われる。が、そこにいたるまでの前半の展開が遅すぎ、安っぽいハープシコード風の曲が使われたり、と悪い意味でクラシック。古い題材にニューウェイブな曲を使って新鮮さを狙いたいなら、展開もモダンに早くないとつりあわない。

18歳の誕生日に夜通しパーティーの後、朝日を見るマリー・アントワネットと仲間たちの場面は、学生映画を見ているようだ。ソフィア・コッポラ、しっかりしろ!現代女性に共感が持てるアントワネットを描こうという意図は分かるが、全般的に表面的な感情しか伝わってこず、浅はかな王妃という既存のイメージそのままで、感情移入できない。脇役たちも、ルイ16世(珍しくミスキャストでないジェイソン・シュワルツマン)以外は平面的で影が薄い。