感謝祭、ギグ二本

   

このところ仕事二本と音楽で忙しく、更新が遅れてしまったが、大切な出来事や思ったことを書きとめておく。

先月18日、土曜日の夜は月一の自宅コンサート。ぎりぎりまでスケジュールの調整がつかず、時間を勘違いしていた出演者もいて、はらはらしたが、ふたを開けてみたら25人ほど集まり大盛況だった。

出演者はジョシュア・コンヴェイ(ギター)&Spin-17(エド・チャン&清水素子)、ニニ・モルジア(ギター)&ジョーダン・シュランツ(ベース)、ケイシー・ブロック(エレクトロニクス)。シカゴのバンド、フェッセンデンのジョシュアとは初の顔合わせで、私はボイスとおもちゃ、鉄琴を、エドはシンバルをボウで弾き、エスニック音響系ロック風即興。

感謝祭をNYで過ごすために、エドの妹家族もサンディエゴから訪れた。8歳ともうすぐ6歳の甥っ子は、上記三組の後にSpin-17と共演し、観客の喝采を浴びた。自分がおもちゃを演奏し始めたころを思わせるパワーと新鮮さが楽しかったが、子供はどこでやめれば良いかの見極めがつかない。ミュージシャン同士なら通じる合図も通じず、余興としては少々長くなりすぎたが、何とか終わらせた。下の子が叩くドラムのリズムがなかなか良い、と思ったのは肉親の欲目だろうか?私もエドも彼に合わせて演奏していた。

23日にはサンディエゴの妹夫妻と子供二人、下の妹と彼氏、義理の母が訪れ、初めて感謝祭のご馳走を作る。前日に、近所の東欧系肉屋に予約した七面鳥を取りに行き、13パウンド(約6キロ)もあるのを抱えて帰る。下の甥っ子の誕生日がもうすぐなので、エドにはイタリアン・ケーキの老舗Veniero’sからストロベリー・ショートを買ってきてもらう。その後、カートを転がして、二人でスーパーに買出しへ。

さて感謝祭当日。生ターキーは強烈だ。でかい。重い。骨が高々と左右にそびえていて、生きた獲物を殺して食う原始人の気持ちになる。内蔵は肉屋がきれいにしてくれているが、その隙間には、グレイビーを作るための長くしっかりした首の骨と洗った内蔵が入っている。スーパーで売っている冷凍ターキーは予約不要だが、味が劣るのはもちろんのこと、私たちの食物となる生き物に対しての感謝の気持ちも薄れるような気がする。

料理本で足りない分を補おうと、慎重なおたくのエドは、YouTubeでローストの仕方を調べてくれる。非常に参考になっただけでなく、BGMが70年代ポルノの音楽みたいで、首と内蔵をとった後に大穴(ここに詰め物をする)が開いたターキーを見ながら、鶏とセックスする趣味の人は、ターキーにも欲情するのかなあ、と思った。

感謝祭のごちそうは、メニューに比較的柔軟性があるクリスマスと違い、おせち料理のように伝統的な定番が決まっている。初めてなので、超定番にした。ターキーにスタッフィング(詰め物)、グレイビー、ブロッコリ、ヤム芋キャセロール、コーン、アップルサイダーを作り、妹たちと義理の母がマッシュポテト、サラダ、シュリンプカクテル、アップルパイを持ち寄ってくれた。

おせち料理七面鳥ローストが違うのは、夫婦共同作業であること。料理というよりは作業といった感じで繊細さに欠ける分、やはりアメリカの代表的料理であるバーベキュー同様に、夫も協力するため、家族のための感謝祭というコンセプトにぴったりで感心する。

ローストは思ったより時間がかかり、遅めのランチのつもりが早めのディナーになってしまったが、味は最高だった。アメリカ人でないから手抜きの要領を知らず/あえてせず、冷凍や出来合いものを極力使わなかったせいもあるだろう。今まで食べたターキー・ディナーの中で一番おいしく、ゲストも喜んでくれた。

たっぷり食べた後、その後数日はターキー三昧なのも、おせちのようだ。サンドイッチ、照り焼き、マスタードソース焼きなど、嬉々として食べた。ついに食べ飽きた後は肉を全部こそげ、ターキー・チリを作り、巨大な骨とにんじん、セロリ、玉ねぎ、しいたけ、昆布を煮出してスープを作り、チキンも入れてヌードル・スープに。残りの海老でチャーハンも作った(インド料理に使われるバスマティ米で作ると、ぱらぱらして美味しい)。

感謝祭前後は映画が多くリリースされるが、リハーサルもあり、映画館には行かず、その代わりビデオを見た。「サンダーボルト」は、タイプが違う男二人のゲイ的友情を、自然を舞台に描いている部分は「ブロークバック・マウンテン」みたい。「スカーフェイス」のパチーノはもちろんすごいけど、トニー・モンタナという名前を考えたオリバー・ストーンもすごい。名は体をあらわす強烈な田舎くささ。この映画はギャングスタラップのファンに人気があり、トニー・モンタナとブルース・リーは黒人の2大非黒人アイドル。「ボーン・アイデンティティ」のマット・デイモンは、ベビーフェイスとタフなボディが記憶をなくしたCIAエージェントという役にぴったり。二作目よりこの一作目の方が面白い。この人が主演で「陽のあたる場所」をリメイクしたらはまりそう。

26日はロウアーイーストサイドのロッククラブ、Cakeshopで、NYとシカゴの実験音楽・音響ミュージシャンによるコンピレーション・レコード「Getting rid of the glue」の発売記念ギグ。出演はHemorrhage, Hatefuck,Talibam!, Dirty Churches。Spin-17はトリで、4連休最後の夜11時過ぎなのに、客が20人ぐらいいて、拍手や歓声で応えてくれる。エドはギターを、私はボイス、おもちゃのバスドラにコンタクトマイクをつけたのとシンバル、おもちゃ担当。

エリントンの「キャラバン」のパンク・バージョン、おもちゃとギターのデュオ、ボイスとボウ弾きギターのデュオで、最後はメドレーで締め、大いに盛り上がる。メドレーの曲順はMr PC/Blue Velvet/Foxy Lady/Smells Like Teenage Spirit/It Don’t Mean a Thing/Star Spangled Banner/ A Man & a Woman/ Momo/007/21st Century Schizoid Man/Mr PC
ロッククラブには珍しく、PAも良い仕事をしてくれ、おもちゃとは思えないような低音の効いたドラムの音も評判良かった。

購入はこちらから。
http://www.psr.pendugallery.com/releases/psr0016.htm