Ratatouilleレミーのおいしいレストラン


ピクサー映画の最高作「トイストーリー1&2」に次ぐ秀作。料理が得意なねずみレミーは、仲間のねずみからは変わり者扱いされ、かといって人間のレストランで料理することもできず、アイデンティティの危機に悩むテーマも「トイストーリー」と共通している。レミーは、パリの有名シェフであるグストーの「誰でもシェフになれる」という本で料理を覚えるが、彼の父は、捕獲されたネズミがずらりと並んだネズミ捕り用品のショウウィンドウをレミーに見せ、人間とネズミが敵同士であることを示し、自分のやりたいことと、家族の絆や義務の間で葛藤が起きる。

ラタトゥーイは、ありふれた野菜を煮込んだ、シンプルな家庭料理だが、レミーの手にかかると、口うるさい料理評論家を満足させる、素朴でいながら洗練された味になる。「誰でもシェフになれる」と言うグストーと、芸術はエリートのものである、という評論家の主張は、クライマックスでレミーが作るラタトゥーイに融合され、自分が何かを認めて、現実と自分を調和させる「トイストーリー」(コマーシャリズムの中で自己を知るのは共通している)よりも物語的に成熟している。

一方、自分であることに葛藤しつつも、自分でいて大丈夫、というメッセージは、ご都合主義的でもあり、やはりディズニー制作でトゥイーンに大人気のTV映画「ハイスクール・ミュージカル」を思わせる。細かいディテールが集まったパノラマ的場面や追跡アクションなどピクサー印の絵だけでなく、「トイストーリー」以降の同社作品に比べ、物語自体も幅広く、良く出来ていて楽しめた。が、ネズミというキャラクター&デザインのせいもあるのか「トイストーリー」の人形たちに対するよりも感情移入の度合いは少なく、感動もその分薄い。ちなみに、フランスを題材とした映画は、今年のNY映画祭でもたくさん見られた。
http://www.nytimes.com/2007/10/05/movies/05fest.html