芸術と日常

今年の後半は、音楽の主なパートナーでもある夫が病気がちだったこともあり、殆ど音楽活動をしていない。NYに来てから12年間音楽漬けの日々だったので、ここらで一休みする時期かもしれない。家で少し翻訳の仕事をするくらいで、オフィスに毎日通うこともなくなったが、充実した毎日だ。映画に読書、家事の日々を過ごしているうちに、創造性とは芸術活動にのみではなく、日々の生活にこそ発揮されることを強く実感するようになってきた。音楽で培ったアーティストの目や心、センスを家庭生活に応用すれば、ささいなことにうれしく思い感動して、細部の積み重ねである生活の新鮮さを保つよう努力できる。

新しいレシピに挑戦したり(やっと最近力が抜けてきて料理が楽しくなってきた)掃除のやり方を工夫したり、家族との付き合いにしても、家族の反応を見ながら自分の行動を変化させ、自分も家族も気持ちよく暮らせるよう頭と心を使って、日々新しい目と心で生きていく。その場で絶え間なく作曲をしていく即興音楽のミュージシャンと一緒だ。楽しく映画を見れる目と心に感謝し、夫や猫と一緒に笑ったり喜び、泣きもする家庭生活は自己充足&完結していて、あえてそれらの生活で思ったことを音楽として表す気になれないし、今まで表現していた比較的未成熟な感情とは違うので、どうやって表現して良いかもまだ分からない。ユーモアは今まで音楽で表す方が得意だったが、会話でも表せるようになってきて、生活に笑いが増えたせいもあるだろう。成長した一方、自分たちの喜怒哀楽を本当に分かるのは自分たちだけ、という、より深いシニカルさに向かっているためもある。とはいえ、こんなものを書いてるぐらいだから、もちろん完璧には自己完結してない。子供でもできたら、また外に向かって表現したくなるかもしれない。これからの自分の成長が楽しみだ。

写真は先月22日の感謝祭のごちそうと、旬のスクアッシュをローストして炒め野菜を詰めたもの。メニューは七面鳥ローストに栗入りの詰め物とグレービー&クランベリーソース添え、マッシュポテト、さやインゲン炒め物、キャベツのインド風炒め物、スパゲティスクアッシュのロースト、友人の母が作った赤飯、大根葉の漬物、アップルサイダー、ブラウニーズ。友人が持ってきた「太陽にほえろ」のレコードに合わせて、「ミツバチのささやき」のアナ・トレントのように可愛い彼女の子供と、踊ったりドラムを叩いてご機嫌な私。