Heavy Metal in Baghdad バグダッド・ヘヴィー・メタル


イラク唯一のメタルバンド、Acrassicaudaをフセイン政権崩壊後の2004年から2007年まで、バグダッドからシリア、トルコへと追っていく。「ジャッカス・ザ・ムービー」に政治的視点を取り入れたような、ブルックリンを拠点としたオルタナ雑誌「Vice」が作った、2007年のドキュメンタリー映画だ。
リハーサルに銃を持っていく。
リハーサルスタジオが爆破される。
メタルは欧米の音楽だから、ヘッドバンギングユダヤ系の宗教儀式のように見えるからと、メタリカを聴いて育った、自分の好きな音楽をやりたいだけの若者が迫害される。西側では政治的でない音楽でも、イラクでは命がけの反抗になってしまう。安全に音楽をやる自由のためには、家族と離れて暮らさざるを得ないという、西側では考えられない選択を強いられる。彼らを追うクルーももちろん命がけだ。
アクセントはあるものの、英語が達者なバンドメンバーは当然、罵り言葉もしょっちゅう使うが、アメリカ人のガキと違ってなぜか可愛さがある。バンドはド下手ではないが、プロとして大成功するレベルも独創性もない。が、それがかえってリアルで、好感を持てる。イラクのメタルバンドという意外な設定の中で描かれるのは、ミュージシャンでありイラク人である前に、誰にもあるはずの自由を追求するただの人間だからだ。米軍占領後のバグダッドの荒廃はただ胸が痛む。政治家たちよ、見ろ。

「Vice」のウェブTVでも世界中のいろいろな話題を取り上げている。
http://www.vbs.tv/