GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊2.0


新しく挿入されたCG場面が、オリジナル場面から別の作品のように浮き上がっている。ヒロイン草薙素子のダイビング場面など、CGによって無個性になってしまっており、今年公開とは思えないほどの不器用さだ。
オリジナルをクリーンアップして、コントラストや色調を調節しただけで良かったのに残念。まあ、新しくCGを入れないと、予告編も見栄えがしないし、マーケティングしにくいのだろうけど。GHOST IN THE SHELLスピルバーグが実写化する予定なので、それに合わせたリニューアル版かもしれないが、それならもっと丁寧に作って欲しかった。

CGの難点にもかかわらず、作品の素晴らしさを再確認した。オリジナル公開から13年たっても全く古くなっていないどころか、ますます重要性が増しているハードSFな世界。現実とネット上の出来事の境界の曖昧さという主題は、現実VS記憶や幻想という古典的なテーマでもある。「サイボーグ化された人間の中の、オリジナルの脳」が「ゴースト」と呼ばれるのも、その境界を混乱させる度合いを強めている。文句なしに行動の人であるヒロインは、自分探しをする部分も持ち、隙間の多い内省的な音楽が効果的にそれを強調している。

草薙素子は日本映画どころか、世界でもまれに見る、男の添え物でなく心身ともに強いヒロインだと思う。主役級で知名度が高いキャラクターに限れば、日本映画ではナウシカ、さそり、成瀬作品の高峰秀子くらいしか思い浮かばない(個人的には「豚と軍艦」の吉村実子と「現代やくざ 人斬り与太」の渚まゆみもあげたいが)。アメリカ映画のアイコン的キャラクターの中でも「エイリアン」のリプリースカーレット・オハラ、「羊たちの沈黙」のクラリスに、「イヴの総て」のマーゴ・チャニングくらいだろうか。アメリカのTVには「ワンダーウーマン」から「エイリアス」まで強いヒロインは決して少なくないが、映画では殆ど見当たらない。同性のヒーローに共感したい男性客を考慮した、リスクを恐れるマーケティングに、「キャットウーマン」などの失敗が拍車をかけたのだろう。が、強い女が好きな男は、私の周りにも結構いる。女の客の方が、主人公が同性でなくても共感できる幅が広い傾向はあるかもしれないが、実際の男たちは安全パイのマーケティングが示すよりは馬鹿じゃない。強いヒロインが登場する作品があまりないから、それを演じられる女優も限られている。スーパーヒーロー映画がこんなに沢山あるんだから、そのうち一つや二つは女が主人公でも良いと思うが。