Watchmenウォッチメン


3月6日に公開されてからすぐに見たのに、忙しくてアップデートが延び延びになってしまった。
タイム誌の世界文学ベスト100リスト中、唯一グラフィックノベルとして選ばれた「ウォッチメン」が、「300」ザック・スナイダー監督により初めて映画化された。目には楽しいが、心は物足りない。原作のファンである夫は「スーパーヒーロー・コミック史上最もsubversive(反体制的、破壊的)な原作を超える素晴らしさ」と絶賛する。が、性犯罪を好んだり、精神異常だったりとヒーローにはあるまじき性格も、おたくの考える悪人というか表面的な設定のようで、心の暗黒が感じられない。ほんとのダークさは一見そうは見えないところにあるのにと思ってしまう。もちろん、彼らの背景がスローな展開で説明される、3時間近い作品の前半30分ほど寝てしまったせいもあると思うが。
それにしても一番面白かったのは、ヒーローもセックスにファンタジーが必要だという場面だった。かつてウォッチメンの一人だった中年男ダニエルが、以前の仲間とセックスしようとするが勃たず、ヒーローとして復活すると同時に下半身も復活する。スーパーヒーロー映画は、理想化された自己の投影&そのエンターテイメント化という、映画を見る理由の原点そのものだと思うが、この場面は観客がヒーローに感情移入するのではなく、ヒーローが観客のはらわたのレベルまで降りてきているところが、スーパーヒーロー物のパロディーにもなっていて興味深い。