Forbidden Broadway Goes to Rehab

  
ブロードウェイ作品を長年パロディーしてきたオフ・ブロードウェイのレビュー「フォービドゥン・ブロードウェイ」が3月1日で27年の歴史を閉じる。最後の週の舞台は10年ほど前に見たときより、さすがに気合が入っていて、死ぬほど笑わせてくれた。と同時に、ネタにする価値のある作品が減ったからという閉幕の理由を反映するように、哀しい余韻を残す作品だった。
芸達者のパフォーマー4人は男女各二人で、女の方は150センチ以下(クリスティーナ・ビアンコ)と大女(ジーナ・クライズマー)の組み合わせ。最新作とロングラン作品、名作のミュージカル・ナンバーに、それらの作品をおちょくる歌詞をかぶせて歌い踊る。作品の特徴をとらえつつ、それを茶化す演技力と批評力が抜群だ。伴奏はピアノだけ。
昨年秋にオープンした「エクウス」で全裸になったダニエル・ラドクリフは、ハリー・ポッター姿で登場し、「これから僕はグリフィンドールでなくスリザリン寮、僕のゴールデンスニッチを見るかい?」と言いながら、制服を脱いでいき、最後には全裸になる。魔法使いの帽子で、あそこだけは隠されているが。ティーンエイジャーの性の目覚めを描いたロック・ミュージカル「スプリング・アウェイクニング」のパロディーでは、股間にマイクを挟んで撫でさする。
「August Osage County」の、言葉による母娘の喧嘩はボクシング試合の形で表現される。大ヒット作「プロデューサーズ」に続く、メル・ブルックスの映画を基にしたミュージカル第二弾の「ヤング・フランケンシュタイン」は駄作振りがおちょくられ、次は「Blazing Saddle」か?ととどめを刺す。「シカゴ」の「オール・ザット・ジャズ」は、舞台よりネット上の舞台裏ゴシップのほうが面白くなってしまった、「オール・ザット・チャット」とフォッシー風ダンスと共に歌われる。
小柄なビアンコの歌唱力がとにかく抜群だが、歌唱力では劣るクライズマーも、パティ・ルポンやライザ・ミネリらスケールのでかいディーバを演じさせると、大柄をフルに生かした存在感を発揮する。30歳になったアニーは、「アニー」に出演してから舞台に出ていないと、くわえ煙草で嘆く。彼女の歌うメロディーはもちろん「トゥモロー」。ライザ・ミネリは通路に降りて観客(偶然にも私の友人だった!)をつかまえ、「ハーイ・ジェイムス、私の新しい親友」と呼びかけ、大スターの孤独と変人ぶりを描く。
チビデブ少女のはずの「ヘアスプレー」の主人公は大女が演じ、さらにでかい男が彼女の母親を演じる。あまりにも汚い女装姿!サイケ柄のドレスを着た大柄な二人が小さなステージで思いきり歌う踊る姿は、ブロードウェイの大舞台での大アンサンブルに負けない妙な迫力がある。曲は「You can’t stop the beat」をもじった「You can’t stop the camp」。Campにはゲイっぽい振舞いと、意図的な低俗さの両方の意味がある。作品そのものの不出来を隠すための確信犯的チープさでは、「ザナドゥ」も槍玉に挙げられていた。
このレビューを閉幕に押しやった真犯人である、ブロードウェイのディズニーランド化は容赦なく描かれる。「ライオンキング」ではミッキーマウスの被り物をかぶり、空き缶などガラクタをぶら下げた衣装や、いかにもチープな象やキリンの着ぐるみがおかしい。「リトルマーメイド」「メアリーポピンズ」のディズニー作品も取り上げられ、内容の空虚さとIQ低下を批判する。
クリスティン・チェノウェスを演じるビアンコは、チェノウェスの得意技であるキュートな鼻声とオペラ的ソプラノ声を「キャンディード」の曲で交互に使いながら、ミュージカル・コメディの女王だった彼女がブロードウェイを捨てハリウッドに行ったことを批判する。
最後は「Sunday in the Park with George」などのソンドハイム作品。演劇界に根強いソンドハイム崇拝をおちょくる一方で、パロディーに値する作品が少なくなったことを嘆く。最後の落ちは「ショウのないのが最高のシーズン。可能性があるから」とソンドハイムに語らせるという、あまりにも痛烈な皮肉になっている。