ウィーンへの旅 4

10月13日(水)
McCafe で、カプチーノとアップルシュトルーデルの朝食。この街の老舗コーヒーハウスに影響を受けたデザインで、おそらく世界でもっともスタイリッシュなマクドナルドの一つだろう。


レオポルド美術館で、世界最大規模のエゴン・シーレのコレクションに感心。(カタログをスキャン)内面が表に飛び出たような自画像や性的な作品だけでなく、木や、写真を元に描いた町並みも力強い。長生きしたら、どんなにか興味深い進化を示しただろうに、惜しい人を早くに亡くした。パンクな恐るべき子供だったココシュカの作品が、ここにもベルベデーレ宮殿のギャラリーにもあまりなくてがっかり。建築のコーナーから、美術館外の新旧建築が見えるデザインは気が利いている。美術館の中に美術館があるみたいだ。しかし、4人乗るときつきつのエレベーターは、ウィーンを代表する美術館としてはいただけない。




再びナシュマルクト。血色のいい美味しそうなおばちゃんがやっている、立ち食いホットドッグスタンドで,ケーゼクライナー(チーズ入りソーセージ), ブラットブルストソーセージ, グリューナー・ヴェルトリーナー。チーズが口の中でとろける。



英語の本屋をのぞく。黒白黄色のすだれの奥の18歳未満お断りのコーナーには、エゴン・シーレの画集もあった。


ベルベデーレ宮殿。広い庭の入り口には,「去年マリエンバードで」のような植え込みがある。噴水や花壇を見つつ、宮殿までの坂を上ると、ウィーンの町並みが眼下に開ける。ひときわ高くそびえるシュテファン大聖堂は、当時とあまり変わらない眺めなのだろう。宮殿ギャラリーのクリムト作「接吻」は、複製をあまりにもあちこちで見るので、本当に本物なのか疑ってしまった。そして、またしてもプレゼンテーションが良くない。MOMAだったらありえないことだが、ガラスケースに光が反射している。



バロック様式国立図書館は、たくさんの宮殿や教会を見た後でさえ、驚きというしかない。魔法の図書館みたいだ。本好きだったら埋もれていたくなる、世界で一番好きな図書館と言い切れる場所。



ツム・シュヴァルツェン・カメール。1618年に食料品店として創業して以来、同じ家族が経営している、「黒いらくだ」という名のワインバー&高級レストラン。バーはベートーベンの行きつけだった。ブドウ園を持っていて、美味しいワインが飲める。立ち飲みワインバーでは、ゆで卵、いくら、えび、キャビアなど、ガラスケースに美しく並べられたカナッペを出す。指差すだけでうまい物が食べられる、観光客にとってもありがたい場所。平日の 6時少し過ぎには、ウィーンの人々だけで非常に混雑していた。犬を連れた人もいる。大老舗のおばさんウェイトレスはプライドが高かった。支払いシステムが分からず、バーテンダーに聞いたら、すかさずやってきて、「私がここのウェイトレスだ」と挑戦するように言い放った。





バロック様式のペーター教会。こじんまり。


ウィーンといえばウィンナーシュニッツェルで、フィグルミュラーは一番有名なウィンナーシュニッツェル・レストランだ。そのシュニッツェルは、皿からはみ出すほどとんでもなくでかい。美味しいが、ほっぺたは落ちなかった。大皿を持ったウェイターの腕が夫の頭にぶつかっても、謝るでもなし。

サバイバルなドイツ語レッスンも経験できた。混んでいたが、またしても群衆整理がまずく、名前を聞くでもなく、出入りする客で狭い通路はいっぱいに。ウェイター が“Zwei(お二人様)?” とたずねたが、わけが分からなかった私たちは、若いカップルに割り込みされた。周りの人は気の毒がってくれたが、かといってウェイターに割り込みを訴えないのは,アメリカと違う点かもしれない。次の“Zwei?”で、私は勢いよく手を上げ、しゃしゃり出ていった。このように、数は1,2まででこと足りたし,客商売の人や若者はほぼ英語をしゃべるので,ドイツ語を勉強しなくても差し支えなかった。あとは、自分の食べたいものや一度食べて気に入ったものが言えれば、短期滞在だったら十分。同じコーヒーやソーセージ,ワインでも場所によっても味が違うので,比べる楽しみもある。


U-barnでホテルへ



10月14日(木)
気張っていろいろ見すぎたので、少しペースを落とす。夫は朝寝なので一人で出かける。
ホテル隣のショッピングモールにあるパン屋チェーンStrückで朝食。3つほど比べたが、このチェーンの有機パンが一番しっかりした味。焼いたチーズがかぶせてあるバゲットとメランジェ・コーヒー。

その隣のWein & Coをのぞく。手ごろな値段から高級品まで揃えたワインのチェーン店で、奥にあるワインバーで飲んでから買うことも出来る。モールの中の店なのに,おそらくNYのワイン専門店のどこよりも豊富な品揃え。


ホテルのあるマリアヒルファー通りはショッピング通りで、いろんなチェーン店が並んでいる。2軒並びのセルフサービス靴屋は,格安店と中級品で住み分けているが、どちらも似たようなスタイルがあまりにも多い。趣味がいまひとつか,値段に見合わないか。H&Mでは、私が持っている今年の春物のボーダー半袖シャツが,ドル換算してほぼ同じ値段で売られていた。一瞬、真に国際的な会社だと感心したものの、すでにコートが必要な天気なのに、半年前の春物が値引きされずに売っているのは商売的にまずい。


スティフト教会は18世紀のゴシック教会。ウィーンにいると、18世紀を新しいと思ってしまう。マリアヒルファーは17世紀のバロック教会で、ペーター教会を小さくしたような感じ。ショッピング通りのど真ん中なのに、中に入ると静かで、なんだかうれしい。私は9割がた無心論者だが、教会が生活の一部になった気がして、残りの旅行の無事や家族の幸せを祈った。


パン屋チェーンFelberで夫とランチ。卵ハムサンドとクライナー・ブラウナー。


古い書斎のような内装の、リンク通りのアンティーク版画商。ウィーンの古地図が美しいが安くない。クリスマスカードを買う。また犬に会う。若者と優雅な老婦人でやっていて、婦人は黄色になった並木道を犬の散歩に出た。


シェーンベルク・センターに行く途中にある技術大学で購買部をのぞき、小さいスケッチブックを買う。


戦争の記念碑と岩がごつごつした、別府の地獄めぐりを大きくしたような感じの噴水。記念写真を撮るヨーロッパ人の老夫婦がかわいい。


シェーンベルク・センター。シェーンベルクが発明した機械がある書斎、他の文化イベントが併記された年表、手書きの12音チャート、肖像画家としての作品や教師の仕事(クラシックの曲を分析する課題など難しそう)についての展示もあり、シェーンベルク全体の人間像が浮かんでくる。経済的に作曲に集中できなかったとはいえ、多才であることは器用貧乏ではなく、決して悪くないことだと思う。彼自身も教えることを楽しんでいたようだ。図書室にはシェーンベルクの楽譜がずらりと並ぶ。売り物だが、コピー機も備えられている気前のよさ。ベートーベンやクリムト関係など超有名どころでは、いたるところに団体または個人の日本人観光客を見かけたが、ゲストブックを見る限り、ここには日本人は訪れていなかった。ベートーベンのハイリゲンシュタットの家のゲストブックは、日本人の記入が多く(「新婚旅行で来ました!幸せです!」)ラブホテルのようだった。写真は、書斎とシェーンベルクがデザインしたトランプ。



シーフードのファーストフードチェーンNordseeで早めの夕食。
ドブリンガー楽譜店。高価な複製楽譜は目の保養で、手頃なブレヒト歌集を買う。
ゴシック様式のマリア・アム・ゲシュターデ教会。ここやペーター教会のように、ややこじんまりした教会のほうが、落ち着いて内面と会話でき、美術もじっくり味わえる。




デメルザッハトルテを食べようとしたら、閉店するところだったので、板チョコだけ買う。オペラ座広場には椅子が置いてあり、大画面でライブ中継。


カールス教会でモーツアルトの「レクイエム」コンサート。演奏は良かったが、シューベルトのミサの方が有難みを感じ、ドラマがあって視覚的にも面白かった。コンサートを聴きながら,自分の目をカメラ代わりにして,もくもくぴかぴかと量感のあるバロック教会の美術を,ビデオを編集するように一つ一つ追って行った。



やっと、キャットシッターと連絡がつく。猫たちは元気。ほっとして、ホテル近くの鎧のあるカフェで祝杯。