ウィーンへの旅 5

10月15日(金)
ブダペスト
ついに一番近い地下鉄の駅を見つけた。ホテル隣のショッピングモールの中で,何度も通り過ぎていたが,行きたい場所には都合が悪い路線と勘違いしていた。

ウィーン・マイトリング駅からオーストリア国鉄 (ÖBB)でブダペストへ。片道36 ユーロ。駅の表示は分かりやすい。駅構内のStrückで朝食、グロス・ブラウナー(ダブルブラウナー)とクランベリーブレッド。プラットフォームにはガラス貼りの待合室があり、電車の側面にはイタチの絵が描いてある。日本みたい。が、群集管理はまたしても疑問。待合室は狭すぎるし、地下鉄も電車形式の座席なので乗客数の割には狭苦しい。ブダペスト行きは遅れるというアナウンスがあったが、10:05AMの定刻どおりウィーンに到着した。12:49にブダペスト到着予定。電車は静かで早く,座席も快適、窓もきれいだ。


この前ヨーロッパを鉄道旅行したときはEU以前だったので、国境でのパスポート検査があった。今回は、気が付いたら、駅名がハンガリー語になっていた。

車窓から見えるオーストリアの景色は,退屈な郊外と変哲ない畑で,ハンガリーに入ると景色が良くなる。森は緑と黄色の代わりに赤と黄色に色づき、ドナウ川も広くなり(ハドソン川上流に少し似ている)、素朴な農家が見られる。


間違って、一駅手前のブダペスト郊外で降りてしまう。私がトイレから出ると、夫はコートを着ており、数人の乗客が降りたので、あわてて降りてしまった。ずっと寝ていたくせに、降りるのを止めなかった夫を責めたが、すぐにタクシー運転手が近づいてくる。20ユーロを15 にまけさせた。タクシー運転手は気のいいおっさんだったし、郊外の景色も見られ、中央駅から観光地へは、さらにバスか地下鉄の利用が必要だったと分かり、気分がなおった。タクシー運転手にとってはいい儲けだが、ゆうに15分のドライブで、大してぼられたとも思えない。彼の車は、車体のてっぺんにタクシーのサインがあるものの、変哲ないぺこぺこのシトロエンだ。


ペスト : ドナウ川に平行した目抜き通りを歩く。
ユーゲントシュティルとプリミティブな装飾がミックスされた面白い建物があった。中に入っているキリム屋のお兄ちゃんに聞くと、1915年に建てられたと計算機を使って示してくれた(計算機の新しい使い方!)。「死刑台のエレベーター」に出てくるような古いエレベーターを発見。 建築様式はウィーンと似ているが、スケールが大きめで、より時代が古そうなラスティックな要素もある。聖ミカエル教会はゴシックかつ素朴さを残している。





アンティークやキリムはウィーンより安いが、特にほしいものはない。

ジュール・ベルヌの潜水艦がテーマのレストラン。客引きの女の子は、食事しなくても写真を取らせてくれた。ウィーンも人が良いが、ブダペストはさらにその上を行く。道路の向こう側の建物の写真を撮っていたら、少なくとも3回、車が止まってくれた。小さな道ではなくて、常に車が通っている道路でもそうだった。


セントラルマーケットは19世紀末建設の屋内市場。ヨーロッパの中央駅か教会のような外観で,ロシアを思わせるカラフルなタイル屋根が印象的。

文明開化の頃の大工場のように、がらんと天井の高い空間には,小さな食料品店がぎっしり並んでいる。観光客だけでなく,地元民らしき人も多い。

肉屋には、値段を書いた紙が所狭しと貼ってある。

名産のパプリカが,いろんな八百屋やパプリカ専門店にディスプレイされ,いたるところで赤が目に飛び込んでくる。

ソーセージやサラミが吊るされ,山積みのフォアグラはアホみたいに安い値段。出来立てのぬくもりが残っているアップルシュトルーデルもおいしい。ウィーンのナシュマルクト市場よりお洒落度は劣るが,普段着の活気がある。

2階はみやげ物や洋服、バーとレストランもある。卵の殻に絵を描いたクリスマスのオーナメントを2つ購入。各1200 HUFで計10 ユーロ。今日のレートは1ユーロ=300HUFくらいとキリム屋の兄ちゃんから聞いたので値引き交渉したが、引いてくれなかった。HUFで買い物したほうが有利らしい。

ガラスケースの中の物を指差して買う方式のレストランは、2時半くらいだったが,とても混んでいた。”リアル”グーラッシュは大きな鉄なべでぐつぐつと煮えていて,パプリカのせいかニューヨークのより赤い。ワインはグラスで樽から量り売り。戸惑っていたら,カウンターの向こうからお姉ちゃんが出てきて,嫌がる顔もせず,ワインを入れてくれた。


ブダ : ドナウ川対岸へ橋をわたり、中世の城のあるブダ地区へ。岩山にはとりでが作られている。紅葉、特にブダ城の壁に絡まった鮮やかな赤いつたが素晴らしい。城から、町と色づいた木々を見下ろす眺めは、ユネスコ遺産だけあって息を呑む美しさ。




15世紀にハンガリーを治めた王(マーチャーシュ1世)が狩をしている姿を描いた城の犬噴水は、ルネサンスの王様らしく、人と犬が調和している。犬好きな王様だったんだなあ。


Fisherman’s Bastion(漁夫の砦)から対岸の国会議事堂を見つつ、川まで下る。再び別の橋をペスト側へ渡り,タクシーで中央東駅へ。どでかく天井の高い、典型的なヨーロッパの中央駅だ。ビールを買った売店のおばちゃんは、ユーロでお釣りがなく、キュートに困っていたが、2ユーロのところを1ドル払ってオーケーだった。不思議なレート換算。


行きに降りる駅を間違えたので,今回は確認しようとしたが,ブダペスト発列車の車掌は英語をしゃべらなかった。英語ドイツ語交じりで,nicht next stopと言ったら通じた。