Exit Through the Gift Shop/Megamind

Exit Through the Gift Shop


イギリスのグラフィティアーティスト,バンクシーが監督した,本当に事実かどうか話題になっているドキュメンタリー。バンクシーは正体不明のアーティストで,映画の中ではフードで顔を隠し,音声処理で声を変えて登場する。LAで古着屋を営むフランス移民のティエリは,目的なしに何でもビデオ撮影してしまう変人だったが,いとこであるスペースインベーダーに始まり,オバマ肖像画「HOPE」やアンドレ・ザ・ジャイアントのステッカーで有名なシェパード・フェリーなど多数のストリートアーティストの活動を記録するようになる。やがてバンクシーに出会い,彼の映画を撮影しようとするが,できた作品は鑑賞に耐えうるものではなく,バンクシーはティエリにグラフィティアーティストになってみたらどうかと提案する。ティエリはそのノウハウを撮影中に実地で学んだからだ。


ここから,非合法なグラフィティアートの貴重なドキュメンタリーとしての調子が急に変化する。サザビーズで作品が取り引きされるまでになったバンクシーのお墨付きを得たティエリは,Mr.ブレインウォッシュと名乗り,自分のトレードーマークを町中に貼り,メディアに働きかけて, LAでの「Life Is Beatiful」というふざけた名前の初作品展を大成功に終わらせる。ティエリはアイデアマンだが自分では絵が描けないので,スタッフ多数を雇って,アンディ・ウォーホールのコピーのようなアートを大量に作り出す。作品展は長蛇の列ができ,作品も100万ドル以上で売れた。どう見ても,それだけの価値があるようには見えないので,Mr.ブレインウォッシュは実在せず,この映画は偽ドキュメンタリーではないかと論議されている。少なくとも見ている最中は,嘘のようだが現実を撮ったと思わせるうまい作りだと私は思った。本物か偽かどうかは実はどうでもよく,自分の人気をも茶化しつつ,現代社会におけるアートやドキュメンタリーの意味を考えさせるだけで作品の意図は達成されており,スマートで人を喰った,意表を突くバンクシーのストリートアートのような映画。


Megamind

宇宙からやってきた悪役メガマインド(声:ウィル・フェレル)は,宿敵メトロマン(声:ブラッド・ピット)を偶然倒してしまうが,スーパーヒーローがいなければ悪役としての自分の人生に意味がないことに気がつき,メトロマンのDNAから新たなスーパーヒーローを作り出す。が,完全な悪役になるには少々抜けているメガマインドが人選を間違えたため,思い通りのスーパーヒーローにはならず,メトロシティには混乱が訪れる。。。というドリームワークスの3Dアニメ。


ウィル・フェレル主演の映画は当たり外れが激しいが、これは当たりで,おバカ演技の中から意外な賢さがにじみ出てくる系統に属し,フェレルはギャグからシリアスまで幅広い感情を巧みに表現している。善悪は曖昧で相対的なものであり,敵対し合わない限り両者ともに存在価値がないという,スーパーヒーロー物にひねりを利かせた頭のいいコンセプトを,ロイス・レイン的ヒロインとのロマンスをからめつつ,無理なく楽しく賢く表現している。ヒーローは生まれるのでなく作られるなど、スーパーヒーロー物の約束事を多く盛り込みつつもオリジナルな作品だ。始まりはローティーン男子向けに見えるが,それを我慢すると,大人でも楽しめる。AC/DCのHighway to HellやオジーSoul Trainなど,ハードロックの有名曲を複数使うイージーさは気に食わないが。