バックコーラスの歌姫たち

アカデミー賞でドキュメンタリー賞を受賞したばかりの映画「バックコーラスの歌姫たち(20 feet from Stardom)」は、殆どが黒人女性であるバックコーラスに焦点を当てて、ロック史を負け犬の立場から見た非常に興味深い作品。「ギミー・シェルター」のレコーディングでミック・ジャガーとデュエットした経験を振り返るメリー・クレイトンの場面は特に圧巻。

しかし、彼女たちの殆どがその実力にもかかわらずソロで成功しなかった理由として、黒人と女性という要素を繰り返し強調しすぎている。そのため、せっかく興味深い逸話を重ねているのに、結局は画一的に見えてしまい、スターになるには役不足という、作品の主題とは全く逆の印象を与えてしまう。個々のエピソードも着眼点も面白いが、映画全体としてはベストな語り方には見えなかった。

でも、アメリカのロック&ポップ界の層が厚く豊かなのは、こうした無名で才能ある無数の人々に支えられているからだということは、確かに伝わってくる。