ノア


「レクイエム・フォー・ア・ドリーム」後のダーレン・アルノフスキー作品は失望続きだったが、「ノアの箱舟」のノアとその家族を描いた新作「ノア」は意外にも良い出来の、ワイルドな想像力が駆使された感動的な作品。思わず創世記を読み直してしまった。読み直してみて、宗教は人生の理不尽さを説明するために作られたんだなあと改めて思った。映画は、ノアを狂信者としてだけでなく、大いに迷える者としても描いている。神の怒りが人間を滅ぼそうとし、自分はその手助けをしているにすぎないと思っていたのに、義理の娘の予想外の妊娠をきっかけとした妻の横やりで、自分の家族だけは未来があるという状況に陥ってしまい、自分たちが特に優れているわけでもないのに何故と思い悩む。台本、演出、配役、演技、デザイン、いろんな点で意図せぬギャグになってしまう危険を巧みに避けている。