アカデミー賞分析

djmomo2006-03-08

ゲイのカウボーイ純愛映画「ブロークバック・マウンテン」が予想を裏切って作品賞を受賞せず、アン・リーが監督賞を受賞したのは、ゲイよりアジア系へのPCを優先させたためだろう。

アン・リーは初のアジア人監督の受賞。とはいえ、NYタイムズ、シカゴ・サン、LAタイムズ、CNN,BBCの有力紙&メディアのトップ記事をチェックしたところ、この点に言及していたのは、初の非白人監督受賞、と書いたLAタイムズのみ。アン・リー、アジア、初、などのキーワードでグーグルしても、出てくるのは地方紙の記事ばかり。デンゼル・ワシントンハル・ベリーのダブル黒人受賞の時は、大きく扱われてたのに。俳優のダブル受賞、というキャッチーさを差し引いても、アジア系の進出は有力メディアでは無視されているようで、アジア系へのハリウッドの壁は、まだまだ厚いことの皮肉な例でもある。NYタイムズなど、リベラルさを売り物にしているメディアが、実はそうでないことも分かる。一歩ずつ前進していくしかないけど、「ゲイシャ」みたいなへんちくりんな作品が出てきたら、迷惑だねえ。

ホストのジョン・スチュワートは左よりのコメディアンだが、政治的な発言はあまりなく、居心地が悪そうだった。これもPCで、スチュワートを起用するが、政治的な発言を禁じ手にすることで、左右どちらにも目配りしたのだと思う。着替え中のビョークディック・チェイニーに撃たれたため、出席できなくなった、というジョークはうけたけど。

スチュワートを起用したが、左よりの発言を封じ、ゲイを避ける代わりに、人種問題を扱っている「クラッシュ」に受賞させ、アン・リーに監督賞を与えて、人種への気配りを示した、妥協案PC的な、今年のアカデミー。「クラッシュ」は見ていないので何ともいえないが、スチュワートの司会はあまり面白くなかったなあ。

追記:バラエティ誌のトップ記事もチェックしたが、アン・リー、アジア人または非白人としての初受賞、とは書いていない。アン・リーのスピーチ自体も、台湾と中国の家族や友人には中国語で感謝してたけど、アジア人として名誉、みたいなことは特に言ってなかった。台湾出身だから、日本と似てて、人種意識がそんなにないのか、それとも、ハリウッドで生き延びるための知恵か。ハリウッドに進出してからの、この人の最近の映画は白いもんなあ。Crouching Tigerグリーン・デスティニー)は外国映画だし。