"No Fun" Was Fun! / 2 Night Stand with a Rock Star


ブルックリンで3月17−19日から開かれたノイズのお祭、No Fun Festに行ってきた。19日のヘッドライナーだったNYノイズ&即興シーンのゴッドファーザー、Borbetomagus(ボビードメガス)のギタリスト、ドナルド・ミラーを家に泊めたので、19日だけただで入れてもらった。

ビードの、ヘルズエンジェルズかランバージャックみたいな3人のごつい男たちが作り出す音は、誇張なしにアリーナ級の爆音で、以前聞いたときは翌日耳鳴りがひどかったので、耳に悪そうな周波数をカットする耳栓を持っていった。長時間でも耳が痛くならず、観客も若いので、低音系ノイズにミラーボールが回ると、普通のロックフェスか楽しいナイトクラブのようだった。

会場のライブハウスThe Hookは、2フロアに中庭、物販スペースもあり、キャパ500人は軽いだろう。NY外からの客も多く、3日間全て売り切れ。地下鉄Fラインの駅から出るはずのシャトルバスは止まっていて、私と夫のエドは、NYの外から来た人たち5-6人をクラブまで引率。マンハッタンにこれだけの場所を確保するのは無理とはいえ、一人では絶対歩きたくない場所。観客は思ってたより女の子の割合も多く、ロック系よりは地味で、グラマラスではないが、なかなか可愛い子もいた。拾った毛皮のコートに銀ラメのスカーフ、タイトな黒ジーンズに赤口紅の私が一番派手だったかも。

毎日20ぐらいのバンドが出たが、私が見て顔と名前が一致したのは、サーストン・ムーアとエレクトロニクスのLeslie Kefferのデュオ、Borbetomagus、No Neck Blues Band。サーストンのデュオは、彼から影響を受けた人がたくさんいるからかもしれないが、印象が薄い。Borbetomagusは相変わらず、音のレイプのよう。サックスにエフェクトつなげた2人と、主にテーブルトップギターを演奏するドナルドのウォール・オブ・ノイズ。
フェスティバルも楽しかったが、ドナルドが家に泊まってのセッションと、延々と続く彼の話のほうが面白かった。即興&実験音楽界には珍しく、ロックスターのカリスマと風格をもったドナルドは私のアイドルで、今まで2回一緒にギグで演奏したことがあったが、今回は彼をすっかり堪能できてうれしかった。

ボービドの音の固まりの襲撃は、個々のメンバーの音をそれぞれ聞くことを許さないが、ドナルド一人だと、ボービドのときと違い、ノイジーで攻撃的でありながらも、彼の人柄を反映してか内省的にも聞こえる。あらゆる周波数の音を発する有機的なオーケストラ・ノイズであり、一緒に歌う私にディーバ気分を味合わせてくれる。脳内麻薬出まくりだ。あまりビールも飲んでないのに、演奏が終わったら、ドナルドのひざに乗っかって、ラップダンス(もどき)踊っちゃったもんね。

それに、彼の話の面白いことと言ったら!本だけではなく体験に基づいた博識で、ジョークを交えながらの話は、知性と知識があふれ、親しみやすい。ホワイトトラッシュ系ハンサムで、優しくて紳士で、リベラルで、元ジャンキーでコロンビア大学中退。深南部とワシントン出身のニューヨーカーで、現在はニューオーリンズに住む。話題の豊富さといったら!!ハリケーンカトリーナ(避難、赤十字、医療&郵便状況、ニュースと実際の違いなど)、79年結成のボービドとNY音楽シーンの内輪話、哲学、クラシック音楽家のアプローチと性格の違い、音楽と数学、Early Music、『裸のランチ』リーディング(空で覚えてる)、ジョン・ケージ、「フィネガンズ・ウェイク」、猫、日本映画(大島、黒沢清ゴジラなど)、ジャパニメーションアメリカンコミック、南部とアジアの共通点、KKKと日本の中国侵略、にんにくの胃を痛める部分を取り除く方法(これは実演)などなど。。。そこらへんの大学教授よりよっぽど面白い。

カトリーナ後、中に残っていた食品のためにバイオ・ハザードとなった白い冷蔵庫が、黒いダクトテープでぐるぐる巻きにされて、各ブロックに積み上げられていた、とも話してくれ、終末的で強く印象に残った。体も、作り出す音もごっついドナルドが、ティーンエイジャーの女の子が持つような猫の絵の、可愛いお風呂用ポーチを持ってきてたのにも笑った。近所の人の猫はハリケーンのときに姿を消したけど、新しく生まれた赤ちゃんを連れて戻ってきたそうだ。

http://www.nofunfest.com/2006.html