The Devil and Daniel Johnston

djmomo2006-04-05


ビレッジボイス紙の試写会で見た。ボイスの試写会で見せる映画の半分ぐらいはクズだが、これは良かった。

躁鬱病を抱えるアーティストでソングライターのダニエル・ジョンストンを、いわゆるお涙頂戴の芸術家の狂気でなく、神経に障るほどリアルで感動的に描いたドキュメンタリー映画。かつてソニック・ユースやハーフ・ジャパニーズとも親しく、カート・コバーンが、現存する最も偉大なソングライター、と呼んだ、カルト音楽スターである。

Jeff Feuerzeig監督は、ジョンストン自身がとった古い8ミリビデオ、作曲テープ、アメリカンコミック調のイラストと、本人・両親・友人などの証言を巧みに編集し、身近な人々を死に追いやりそうになったことも一度ならずある、心に悪魔を抱えるアーティストを描き出す。古いホームビデオの傷と汚れは、季節はずれの雪の結晶のように大画面でいらいらと瞬いて、観客の神経をテストするかのようだ。

オルガンやギターの稚拙な弾き語りによる、ジョンストンのフォークソングは、シンプルでポップで物悲しい。現在40歳代半ばのジョンストンは、テキサスで両親と暮らし、地元バンドと音楽活動を続けているが、今の自分を“ダニエル・ジョンストンの幽霊”と見なしている。子を残して死ぬに死ねない、ジョンストンの両親の姿には、涙が出てくる。