ビョーク&マシュー・バーニーの「拘束のドローイング 9」

djmomo2006-04-14


ビョークのボーイフレンド、マシュー・バーニーが、自分とビョークを主人公に撮った前衛映画。全く抽象的というわけではなく、一応筋もメッセージもあるが、ハリウッド的な語り方はしてない。日本の捕鯨船にこの2人が乗り込み、神道の結婚式を挙げ、いちゃいちゃする映画、としか言いようがない。原題はDrawing Restraint 9。

編集は、たぶん意図的にプツンプツン、としていてスムーズではないが、1カット1カットごとがいちいち、息を呑むほど美しい。水や油の動きなどを撮った芸術写真的ショットだけでなく、普通の日本のおじさんたちが甲板で作業してる場面の、普通に見える構成とかが、いちいち美しい。けれども2時間15分、アンビエントな音楽中心で殆ど台詞なし、は正直きつかった。音楽はビョークによるが、彼女の歌声があれば場面が救われるのに、と思った箇所もたくさんあった。そう思うことも「拘束」という主題の一部かもしれないが、ビョークは好きでも、ビョーク信者じゃないので、マゾ的拘束が快楽になることも、作品のメッセージが心に訴えてくることもなかった。

捕鯨船茶の湯を呼ばれた二人は、海がテーマの摩訶不思議な着物を着せられる。わざわざ濡らした投網を肌身に着け、文金高島田風のビョークの髪型はたくさんのウニの殻で飾られ、打掛と羽織は毛皮(狩猟民族としての西洋をも表している?)でできており、背中にほら貝を背負っている。茶の湯の道具も貝殻を使っているが、作法はきちんとしている。日本文化をきちんと分かってて、モダンに崩してるので、外人が見るとこうなるんだ、という面白さはあっても、ハリウッド映画や前衛演劇にありがちな、勘違い日本を見るときの不快感はなかった。ヘアメイク担当が柘植伊佐夫という人選を見ても、そこらへんはわきまえてる様子(柘植伊佐夫は、「オペレッタ狸御殿」など、最近映画の仕事でさらに活躍してるようで、元オリーブ少女としてうれしい)。

鯨を取りつつも自然と戦うのではなく共存する日本&自然と共存する鯨、自然および人間と対決せずには生きられない西洋、というメッセージを描いているらしいが、作品から受ける印象は、ビョークとバーニー、もう勝手にやってちょーだい、って感じ。ビョークの“Vespertine”でI love him,I love himと繰り返し歌われた2人の愛は、まだまだ全開で続いている様子。お幸せにー!!