「Wicker Man」「Eyes Wide Shut」「三つ数えろ」「エル・トポ」

djmomo2006-04-19


The Wicker Man ウィッカーマン

独特の非キリスト教的風習を持つスコットランドの島で、失踪した少女を探しに、イギリス本土からクリスチャンの警官が訪れるが、島の人々は捜査に非協力的で。。。
Robin Hardy監督。1973年作。

パブやストーンサークルで、フォークミュージックを輪になって歌い踊る島の人々は、コメディ映画「Mighty Wind」や「スパイナルタップ」を思わせるが、真面目に風俗を描いているのか、笑いを狙っているのか分からないおかしさ。普通の田舎の人々がヒッピーのようにふるまう、微妙なおかしさと恐さ。舞台となるSummerisle島は実在しないし、本当にこういう風習があるのかどうかは知らないが、作品の中ではいかにもありそうなのだ。ホラー/スリラーらしくなく、徐々にテンポを上げていくのも、他と隔離された島にふさわしく、おかしくのどかなだけに、ラストが恐い。

ニコラス・ケイジ主演、ニール・ラビュート監督によるリメイクが、アメリカに舞台を移して今年公開予定。オリジナルで島の領主を好演したクリストファー・リーも出るらしい。ケイジ主演、ハリウッド制作では、ラストは違うんだろうなあ。双子の兄弟が出てきたりして(それは「アダプテーション」だって)。

こんなフェスティバルもある。カルト映画&音楽祭らしいが、出演者にはマーキー・ラモーンやアニマルズの名前が。
http://www.thewickermanfestival.co.uk

Eyes Wide Shut

Wicker Man同様、ヨーロッパ的な儀式を題材にした映画を偶然、同じ日に見た。キューブリックの遺作で、死の影が濃い作品。1999年作。

トム・クルーズはヤッピー成金医者で、笑顔で現金と医師免許を振り回す嫌な奴。ニコール・キッドマン演じる妻の性的ファンタジーにショックを受けるが、自分の性的妄想には目をつぶり、アメリカの偽善を代表している。自分の妄想には目をつぶるゆえに、妄想に引っ張られ、性的ファンタジーを満たそうと、長い夜の旅に出かける。

キッドマンを口説くのも、クルーズが参加しようとする秘密の乱交パーティーの参加者もヨーロッパ系男で、アメリカの偽善はだめでヨーロッパならいいのか?と疑問を抱かせるが、理屈で深く突っ込みすぎない限り、面白い旅。いかにもありそうな、男と女の違いを巧みに描いた夫婦喧嘩から、日常性を逸脱した旅に入っていく描き方もうまい。

サイエントロジーがらみで、今ではすっかり人気が落ちたトム・クルーズ。偽善的なクルーズの役柄は、現在の彼を予測しているようにも見え、最後のニコール・キッドマンの台詞にしても、今考えると意味深。クルーズが一番人気だった公開当時は、もっと汚れ役として衝撃的だったんだろう。クルーズはアホな狂言回しの役がぴったりで、時にイイ男にすら(!)見える。特に、心の中の暗黒が見える、タクシーに乗っている場面。キューブリックは役者の使い方がうまいね。ドラマティックな照明も印象的。

それにしても、セックス場面に全く色気がない。NYの街がセットで撮影されているのと同様に、夢の中のような距離感を表すためだろうか。

三つ数えろ The Big Sleep

ローレン・バコールがとにかくハンサムだし、ボガートとの相性もばっちり。私立探偵ボガートの仕事を助ける、古本屋の店員の女の子は、お約束で眼鏡をとったら可愛い子ちゃんだが、実は眼鏡ありの方が可愛い(ハル・ハートリー作品の見すぎ?)。ハワード・ホークスの映画はHis Girl Fridayにしても、超早口の機知に富んだやり取りで、リスニングに慣れるまで、頭がくらくらする。作品中の台詞からとった邦題もナイス。最近の、内容を見てるのか疑わしく、センスもない邦題とは大違い。

エル・トポ

前見たときはシュールな映像の方が印象的だったが、見直したら、spiritual journeyの側面も強く感じ、カルトの古典であると同時に、1970年制作という時代の雰囲気も感じさせた。