「プロデューサーズ(2005)」

djmomo2006-04-29


プロデューサーズ The Producers(2005)

今まで見た中で最悪のミュージカル映画の内の一つ。ひどいとは聞いてたけど、ここまでとは思わなかった。舞台のエネルギーを映画化できてない、というレベルの欠点じゃない。クローズアップやバストアップの登場人物の頭のてっぺんが、数え切れない頻度で画面からはみ出していて、落ち着いて見てられない。2時間ほどを休憩なしで見るのはほんとに苦痛。

メル・ブルックスの1968年のコメディ映画を、2001年にブロードウェイでミュージカル化し、大ヒットした舞台の映画化。舞台がオープンする時に、映画化は?と記者に聞かれたブルックスが「プロデューサーズ」って言う映画はもうあるんだけど、知らないの?と、すっとぼけた答えをしていたが、そのとおり再映画化なんてしなければ良かったのに。

私は、元の映画も舞台も好きで、映画が一番好きだけど、舞台も2回見た。この映画の監督は、舞台と同じスーザン・ストローマンで、彼女は舞台監督&振付家としては最高だけど、映画監督としては、この作品に関しては最悪。舞台をそのまま映画化、というより、下手な記録ビデオのようで、舞台のエネルギーと間が死んでいる。ハイライトである劇中劇の場面や、ネイサン・レインがこれまで劇中で起こったことを猛スピードで再現する曲や、私が一番好きな噴水の場面(ここではリンカンーン・センターでなくセントラルパーク)も全て小さくて、悲しくなっちゃうよ。舞台と映画の見せ方は違うのに、基本的に殆ど同じに撮ってるんだもの。

沢山あるギャグの間も死んでいて、映画でもおかしいのはゲイねたのみ。そもそも、古き良きブロードウェイにオマージュを捧げつつパロディー化してあり、ブロードウェイの内輪受けジョークが多い作品なので、再映画化するとその精神が死んでしまう。

ついでに言うと、意気地なしで対人恐怖症な会計士役のマシュー・ブロデリックは、ブロードウェイでの誇張された演技そのままで、クローズアップになる映画だとキモイ!オリジナルのジーン・ワイルダーだと、弱気でも目が普通じゃなくて、ブロードウェイ・プロデューサーになりたい、というひそかな野望も納得が行くのだけど。唯一、映画化としての演技を分かっているウマ・サーマンが出てくると、ほっとする。でも、彼女はインパクトのある役だけど、主役じゃないのだ。