Three Times(最好的時光)

djmomo2006-05-01


3つの異なる時代の恋人たちを、張震チャン・チェン)と 舒淇スー・チー)が演じるという趣向は面白いが、期待はずれだった。ホウ・シャオシェン監督。2005年作。

最初の物語は1966年、Smoke Gets in Your Eyesが流れるビリヤード場、とベタな設定。でも、あまりにも撮り方がうまいので、ビリヤードのボールと若い二人を追っているだけの初めの場面から、恋人未満の若い二人の、うきうきと微熱感が伝わってくる。オールディーズな設定に「煙が目にしみる」は、いくらなんでもひねりがなさ過ぎて、アメリカ映画だったら、今更ジョークにしかならないだろう。それでも、優等生的とはいえ、映像がとてもきれいで、絵だけでの感情表現がうまいので、manipulateされる自分を恥ずかしく思いつつも、選曲に不安を覚える。その不安は的中し、音楽の趣味はどんどんひどくなっていく。

次の物語は無声映画で語られ、字幕と映像が交互に出てきてうっとおしい。1911年という時代背景へのオマージュ以外に、サイレントにしてある理由がわからない。ここでの音楽は、無声映画の伴奏を意識してか、中国音楽風ピアノ曲だが、つまらない曲。

最後の物語は、現代の台北が舞台。スー・チー演じるパンキッシュな女性歌手が歌うメロウなロックソングが繰り返し流れるが、下手くそで聞きづらい。エンドクレジットにまで流れたので、耐え切れず映画館を出る。マックのソフト、ガレージバンドで、彼女が作るバンド曲も、素人くささを出しつつも、もうちょっとましなものにできなかったのか?5分ぐらいで作った手抜き曲のようで、作曲中の場面はまだしも、その後、劇音楽としてそのまま使うにはあんまりな出来だ。監督は現在59歳だが、おじさんが若作りしようとしてるみたいで、若者の小道具が使いこなせていないような印象を受ける。

絵は最高にきれいで、情感が伝わってくるのに、音楽がぶち壊しにしている。サイレントだったり、台詞が少ないだけに、音楽が重要な役割を持つ意図はわかるが、肝心の音楽がお粗末。最後の部分は、話としても破れかぶれな印象。バイセクシュアルなロック歌手が、男女の恋人二人の間にはさまれて悩み、彼女にとって大切な音楽も他人の目から見たらたいしたことない、ということを表現したいのだと思うが、下手でもチャーミング、など共感を持たせる要素が、彼女の音楽にない。

チャン・チェンは、「グリーン・デスティニー」のときはいいと思わなかったけど、ここでは普通さが良いのにもったいなあ。笑顔なんか素晴らしい。チャーミングでセクシーな渡辺謙ってところ?若い頃のモックンにも似てる。