ジュリア&バンパイアon Broadway, ミック・ジャガー、TVコメディに出演?

  


今シーズンのブロードウェイもつまんなそうで、自腹を切って見たくなるような作品はなさそう。とはいえ、最も影響力のあるNYタイムズの劇評は、悪い評でも、そこはプロの仕事で面白く書かれている。その中から話題作を紹介。

一番の話題作はジュリア・ロバーツの舞台デビューであるThree Days of Rainだが、彼女の演技も舞台全体も酷評されている。「この舞台が唯一呼び起こす感情は舞台上の役者間のものではなく、ロバーツとそのファンの間の感情のみ」で、「彼女のファンが遠ざかることはなくても、新しいファンを獲得することもないだろう」。一幕目は精神的には普通の役柄だが「ロバーツの声は途切れがちで、しばしば聞きづらく、今にも砕けそうに見えるほど緊張している」。一方、神経症的な役の二幕目では「比較的リラックス」している。

評者はロバーツのファンで、台詞がないときの彼女の顔の雄弁さをほめたたえているが、こういった彼女の美点は「役作りとは全く関係ない」と認めている。ロバーツの資質に反した性格俳優が演じるべき役であり、ロマンティックコメディのヒロインを演じるべきだった、と残念がっている。リチャード・グリーンバーグの作品は、トニー賞をとったTake Me Outしか、私は見たことがないが、スターがいては不適切なアンサンブルピースだったので、これもそういった作品なのだろう。

「レスタト」Lestat
アン・ライスの一連の吸血鬼小説(映画「インタビュー・ウィズ・ザ・バンパイア」は最初の作品が原作)をもとに、エルトン・ジョンが作曲したミュージカル。Musical sleeping pill(睡眠薬のように眠りを誘うミュージカル)とばっさり斬られている。ブロードウェイにゴスは合わないって考える人は、制作者の中にいないのかなあ。吸血鬼のアウトサイダーとしての描き方は、ゲイであることの惨めさを描いた芝居を連想させる、とも。はっきりは言ってないが、エルトン・ジョンへの皮肉だろう。

「Three Penny Opera
クルト・ワイル&ブレヒトの「三文オペラ」。大ヒットした「キャバレー」の二匹目のどじょうを狙おうとしたらしいが、失敗のようだ。「キャバレー」でMC役を演じてトニー賞を受賞したアラン・カミングが主役だが、役柄に要求される「全ロンドンを震え上がらすカリスマ」が殆どない。「キャバレー」を見た限りでは適役だと思ったのに残念。シンディ・ローパーも出演しているが、「ディートリッヒのように見え、歌声はブルックリン版ピアフのよう、(「マック・ザ・ナイフ」の)歌のスタイルはロッテ・レンヤのよう」と評され、個性がない、と皮肉られている。この舞台は見たかったのに、これじゃ見に行く気がしない。

ウェディング・シンガー
アダム・サンドラードリュー・バリモア主演でヒットした同名の映画のミュージカル化。「著作権侵害ぎりぎりの線まで'80年代の曲をパクり」、マドンナ、ボーイ・ジョージ、バン・ヘイレン、ビリー・アイドルなどのもどきがぞくぞく登場(悪夢のようだ)。で、バリモア役は「夢見るバリモアというよりは、ヘレン・ハントのように鋭い」。だめじゃん。

「Landscape of the Body」
オフ・ブロードウェイで再演中のJohn Guare作のストレート・プレイ。リリ・テイラーが主演していて、「比類なき」彼女の演技と舞台全体の評価も高く、内容的にも面白そうで、唯一興味をそそられる。「死体の風景」という題名どおり、テイラーの妹役を始め、無残な死に方の死体がごろごろする中、「タブロイド誌の淫乱さとグリーティング・カードの感傷が、いかにしてアメリカの宗教となったかについての理解に基づき」手に入らないものに強く焦がれる孤独な人々の姿をポップに描いた作品。確かに面白そうだが、批判精神を持ってポップカルチャーをポップに描くのは、より映画向きじゃないかな。見終わった後、気分が高揚しそうでもないし、50ドル払うのは考えちゃう。

「ヘッダ・ガブラー」
イプセンの「ヘッダ・ガブラー」で、主演のケイト・ブランシェットは「同時に十数の人格を生き生きと演じて、ハリケーンのように吹き荒れ、小道具や共演者をなぎ倒す。絶え間なく変化して、数世紀にわたる演技様式を行ったりきたりするので、見ていて楽しいが、うんざりもする。」「数人のヘッダができるほどの矛盾の嵐を演じており、観客は、心の中の編集室で、理想のヘッダを作り上げなくてはならない」。ブルックリンのBAMで3月末まで上演された。

5月10日にオープンの、ディズニー映画「ターザン」のミュージカル化も話題になっている。フィル・コリンズが音楽担当だが、映画「アメリカン・サイコ」を見て以来、コリンズの音楽を使った、あの場面が浮かんできてしまう!

おまけのニュース。ミック・ジャガーが、ABCテレビ・ネットワークでこの秋放映予定のシチュエーション・コメディ番組「Let’s Rob Mick Jagger(仮)」に出演するかもしれない。ジャガーパイロット版の撮影を終えたばかりで、シリーズ制作はまだ正式には決まっていない。制作者はコメディ版「24」のような番組を目指しており、ジャガーの住むNYの高級アパートの管理人が、彼のアパートに強盗に入るまでを描く。脚本家はストーンズの日本ツアーまで追っかけて、出演交渉に当たった。ジャガーは脚本を自分で読み、「非常に乗り気」だそうだ。