Blowup

djmomo2006-05-03


欲望、とはうまい邦題だ。主人公のカメラマンは明らかに撮影がセックスだが、実際のセックスは、いつも邪魔が入り、決して遂行されない。人のを覗く事はあっても。スリラー仕立ての真実を追究しようとして、満たされない欲望でもある。彼の服装は当時流行していたモッズだが、今見ると、青や白のボタンダウンシャツに黒いジャケット、ホワイトジーンズ、とスゥインギングロンドンにしてはスクエアで、満たされない欲望を表現しているようだ。

ハービー・ハンコックモダンジャズとぴったり合った、おいしい画面がたくさん。ヤードバーズの演奏は熱くて冷たい。クレージュっぽいドレスを着たモデルたちの、目に美味しい撮影場面。エネルギーが爆発する場面と抑え目な場面、色っぽい女 と色っぽくない女、時に撮影機材も色っぽく、音楽のようなコントラストでダイナミックに配置されている。芸術家が主人公の映画の作品が下手くそで興ざめすることは良くあるが、この映画の写真は満点。

最期のテニスコートの場面は、白塗りの若いマイム役者たちが無気力そうに立っていて、Night of the Living Deadを思わせるが、ロメロはこの映画に影響されたのだろうか?1966年、ミケランジェロ・アントニオーニ監督。

原題のBlowupは、写真の引き伸ばし、という意味で、これも膨らんだ欲望を表しているような良い題だ。英語でdesireとしても、邦題と同じ効果が出ないのは言葉の面白さ。