The Devil Wears Prada

djmomo2006-07-14


ありえなーい!と叫びっぱなしの映画。

もちろん、映画もベストセラー小説の原作も、作者の「ヴォーグ」での体験が元になっているとはいえフィクションだ。それでも、NYファッション業界という、女の子なら興味津々な夢の業界を描きながらも、働く女の子なら共感できるような要素があるから売れた、と原作を読んでいない私は想像したが、大きく期待を裏切られた。NYでなくても、現在でなくてもいいしね。

ジャーナリストを目指すナイーブな主人公(アン・ハサウェイ)は不本意ながらも、「ヴォーグ」のアナ・ウィンターがモデルとされている名物編集長ミランダのアシスタントに採用され、人使いの荒いことで有名な彼女に使われまくる。

ありえない例のほんの一部を挙げる。いくら主人公が田舎出といっても、NYでジャーナリストを目指すなら、「ヴォーグ」の名物編集長の名前ぐらい知っていて当然。主人公のダサい格好が編集部で物笑いのタネになるが、ただでも働きたい人が押し寄せるだろう「ヴォーグ」がダサ子を雇う理由が弱い。スタンリー・トゥッチ演じる編集部員に可愛がられ、ただでシャネルをもらったりして大変身するのだが、面倒見のいいゲイでもないのに、新人アシのスタイリングしてくれるなんてありえなーい!!そんな暇誰もなーい!!ファッションセンスが一夜にして身につくのもありえなーい!!これって、主題であるファッションに対する侮辱じゃないのか?まあ、結局主人公は当初の夢を実現するので、それでいいのかもしれないが(ファッションの違いを見抜けない人に、ジャーナリズムに必要な観察眼があるとは思えないが)。

現在のNYで(他の忙しい大都会でも)働いているとは信じがたい主人公のナイーブさ。人使いの荒いボスの方が、口は悪いけど、業界を問わずプロとして絶対まとも。悪魔なんかじゃない。ビジネス上では不必要と思われるほど、正直な面もある。存在感では、編集長役メリル・ストリープには誰もかなわないが(オスカー候補?)、かといって個性的な深みがあるわけではない。とにかく、主人公のナイーブさに腹が立ちっぱなしで、いまどきの働く女の子がこんなだと思われちゃ迷惑だ!!「プラダを着た悪魔」でなく、The Dumb Wears Chanel(シャネルを着た馬鹿)という題名のほうがふさわしいかも。アン・ハサウェイも白すぎる肌のせいかいまひとつ不健康で、「ダサくても可愛いけなげな主人公」として、共感がもてない。