ジョン・ケージ・フェスティバル/自宅コンサート

  

土曜の夜は、Brecht Forumで行われたジョン・ケージ・フェスティバルに出演。20人近い出演者プラス観客で、60人ほど集まっての大盛況だった。最初に、ケージのインタビュー映画を上演。回答時間はチャンス・オペレーションによって決定されている。機知に富み、鋭くも楽天的な、ケージのチャーミングな人柄がうかがえる短編。「Fourteen」の演奏とそのメイキング映画も上演されたが、チャンス・オペレーションによる映像はとりとめがなく、眠気を誘う。

9時過ぎからは、8人のミュージシャンがラジオを演奏する「Radio Music」、レコードのカートリッジを演奏する「Cartridge Music」など、レアなケージ作品が演奏された。このイベントを企画したジョン・マクダナが易を使って作曲した、16人のプレイヤーがCDラジカセでケージ作品を再生する「Landscape Under Construction」も披露された。

私はグラフィック・ノーテーション(図形楽譜)による「Aria」を歌い、エドは自家製エレクトロニクスで「Variations II」を同時に演奏した。「Aria」は私たちのCDにも入っていて、ここ8年ほど歌ってきた曲だが、やっぱり大勢の人の前で歌うのは気持ちが良い。楽譜には10種類の声が色分けされていて、その内の一つ、ベティ・ブープの声の節回しも、思い切り調子に乗ってお気楽に歌え、叫び声は思いっきり叫べた。ジョンや楽屋で知り合った他の出演者の笑顔が見え、知らない人たちからのリアクションも感じる。このフェスティバルのために、初めて「Variations II」との演奏を試みたが、お互いのタイミングも合い、なんとかうまくいった。出演者は全員黒、という決まりだったが、私はソリストなので、黒のミニドレスに網タイツ、ブーツで少し冒険させてもらい、校則の範囲でお洒落する高校生のような気分を楽しんだ。
「Cartridge Music」も見て聞いて楽しめる演奏だった。エド始め4人の黒ずくめの男たちが、真剣にスコアとにらめっこしながら、カートリッジでノイズを出したり、アンプを調節する様子はとてもおかしく、秘密の指令を実行しているようだ。

全ての演奏が終わったのは11時過ぎ。リハーサルのために3時から会場にいて、長い一日だったが、不思議とあまり疲れなかった。大きなイベントが成功してよかった。ジョン、お疲れ様!私のソロCDも売れた(NYのギグでCDが売れるのはとても珍しい)。

翌日は、月一で自宅で行っているコンサート。8月は夏休みだったので、二ヶ月ぶり。ブライアン・オズボーンは、パーカッションや拾ったオブジェにコンタクトマイクをつけて演奏。ラビ・パドマナバとエドのデュオは、ラビはタブラを中心としたエスニック度の強いパーカッション、エドアコースティック・ギターをボウで弾き、瞑想的な空間を作り出す。ポートランドから来ているJ.P.ジェンキンスもアコギを演奏、グレゴリー・レイノルズはサックスを吹き、ゆっくりとした盛り上がりが心地よい。出演者を入れて10人ほど、というこじんまりした夜だったが、演奏終了後も残っておしゃべりをしている人々を見ると、うれしくなる。

大好きな俳優、丹波哲郎が亡くなった。合掌。

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