A Guide to Recognizing Your Saints

ハードコア・パンクロッカー/カルバン・クラインの下着モデルで、現在は作家のディト・モンティエルによる同名の自伝的小説の、彼自身による映画化。暴力やドラッグ、人種間の争いが渦巻く、1986年のニューヨークのアストリアを舞台に、ディト少年が仲間の刑務所行きや死を体験する中で、仲間や父親との葛藤の中から自分を見つけようともがき、家を出るまでを描く。柄の悪い地区でたむろす主人公の少年たちそのままに荒削りで、物語の一貫性は今ひとつだが、心に残る場面と演技はいくつかあり、初監督作品としては悪くない。

家を出てカリフォルアニアに向かったディトは、死にかけている父に会うために、約20年ぶりにアストリアに戻る。作家になった大人のディトをロバート・ダウニーJrが、少年時代をシア・ラブーフが演じている。この二人が同じ人物には見えず、現在と過去を行き来する構成も、効果的とは言いがたいが、それぞれの演技は秀逸。喧嘩早い仲間のアントニオ(チャニング・テイタム)やディトの父(チャズ・パルミンテリ)らも存在感があり、特に息子に対する絶対的な愛とそれゆえの束縛を示す父と、自分を模索中のディトが激しく口論する場面は、口論以前のすれ違いが痛い。エンドクレジットで流れる、チープでポップなキッスの「ニューヨーク・グルーヴ」も、昔を美化しすぎることもためらいもない作品のノスタルジアと、良くマッチしている。