ショートバス Shortbus

カナダ系中国人のセックス・セラピスト、ソフィアは夫を愛し、夫とのセックスを愛しているが、オーガズムを経験したことがなく、それを夫には隠している。が、患者であるゲイのカップル、ジェームスとジェイミーには自分の秘密を打ち明けてしまい、ブルックリンのロフトで開かれる、ドラッグクィーン主催の乱交パーティーに招かれる。ソフィアは孤独なSMの女王様と、ゲイのカップルは「二人の関係をよりオープンにするための」セックスパートナーと出会う。彼らを中心に、出会い、すれ違い、また出会い、あるいは別れていきながら、自分のセクシャリティを発見していくニューヨーカーの物語が並行して描かれる。「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」のジョン・キャメロン・ミッチェル監督。

もともと面白いロック・ミュージカルに、映画化にふさわしい手法を取り入れた「ヘドウィグ」の、ぶっ飛んだ深さには及ばない。が、性にまつわる孤独や喪失感が哀しくもおかしく、911後の喪失感や停電(2003年夏に大規模な停電が起きた)など今のニューヨーカーの生活実感をからめて、癒しに向かう方向で描かれていて、楽しめた(セラピスト自身がセラピーが必要、というのもとてもニューヨークっぽい)。でも、肝心のセックス場面は70年代ほど泥臭くなく、むずむずはするけど、濡れない。パーティーレズビアンたちが自由に性を語る場面は、女性器について語り、オフでヒットした舞台「バジャイナ・モノローグ」を思わせ、セックスそのものより性とその周辺の概念についての作品のようだ。

オフ・ブロードウェイでカルト的人気を誇る、ドラッグ・キャバレー・ショウ「キキ&ハーブ」の歌姫ジャスティン・ボンドが、パーティーショートバス」を主催し、彼自身を演じている。キャメロン自身がゲイでもあり、パーティーでの浮かれ騒ぎやセックス場面など、ゲイの描き方のほうがストレートに比べ、よりカラフルでおかしく、生き生きしている。