The Prestige プレステージ

ビクトリア朝のロンドン、マジシャン見習いのロバート(ヒュー・ジャックマン)とアルフレッド(クリスチャン・ベール)は、水槽から縄抜けする手品で、毎夜アシスタント(ロバートの妻ジュリア)に縄をかけている。ロバートは華やかなショウマンシップを、アルフレッドは手品そのものを重視している。ある夜、アルフレッドは、絶対安全パイの師匠のマジックに挑戦しようと、ジュリアの了解の元に違う結び方を試し、彼女は溺死してしまう。友達だった二人は一夜にして敵同士となり、生命をかけた戦いが展開される。「メメント」「バットマン・リターンズ」のクリストファー・ノーラン監督。

凝ったギミックや意外な展開の数々、レトロ&レトロ・フューチャー的なデザインも面白く、2時間10分は少々長いものの、退屈させないが、全体として単純で冷たい印象を受ける。ギミックが命の手品が題材とはいえ、作品自体も空虚だ。主演のヒュー・ジャックマンクリスチャン・ベールも演技はうまいが、人物描写が平面的で、二人がライバル同士であることが、腹の底から伝わってこない。フラッシュバックを多用しており、結末からさかのぼっていく「メメント」より話はわかりやすいが、ギミック自体の新鮮さは薄れている。

陽のジャックマンが人生でも仕事でもベールに足を引っ張られ、陰のベール(邪悪なトム・クルーズのようだ)が性格的にはより複雑で内向的ながらも、仕事も家庭も一見成功しているのは、ミスキャストというほどの違和感はないが、逆のキャスティングでもいけたような感じもして、ばっちりはまり役ではない。二人のマジシャンの間で揺れる小悪魔的な存在のアシスタント、オリビア役はスカーレット・ヨハンソン。彼女でなくてもいい役だが、まあ妥当な配役。エジソンのライバルである電気の魔術師テスラを演じるデビッド・ボウイは、グラマラスに見えないカリスマがあり、今までの演技と違う意外な渋さがかっこいい。

やはりマジシャンが主役で19世紀末が舞台の映画、「The Illusionist」も、8月中旬から公開されていて、実はそちらの方が評判はいい。エドワード・ノートン主演で、ロマンス仕立てのスリラー。