Casino Royale 007 カジノ・ロワイヤル

2時間20分は長すぎ、最近の007を見慣れた目にはアクション不足だが、いちばんの注目点はダニエル・クレイグによる新しいボンド像だ。タフで非情、任務遂行のためには手段を選ばない犯罪者ぎりぎりの態度、不良っぽさ。野生動物にも似たハードボイルドな鎧の下に隠れているのは、傷つきやすく、他人の痛みをも理解できる心だ。ショーン・コネリーのボンドに戻ったというべきかもしれないが、時代のトレンドに合わせ、ユーモアは少なく、暗くシリアスだ。スティーブ・マックィーンや「ヒストリー・オブ・バイオレンス」のヴィゴ・モーテンセンも連想させる。

ピアース・ブロスナンが、作品から一人歩きしてしまった感のある、プレイボーイな紳士スパイというイメージを演じていたのに比べ、リアルな中身があり、ボンドガールもそれに伴って現実味がある。タフさを強調するためだろう、主題歌は初めも終わりも男性ボーカル。ボンドガールとセックスにいたるまでのからみで、新しいボンド像を表現していたが、もっと少ない台詞で同じ効果が上げられたはず。アクションに関しては、次回作へつながる展開で終わったので、これからの盛り上がりに期待。