Curse of the Golden Flower

スケールアップしたユーモアなしの「Mr. & Mrs.スミス」「ローズ家の戦争」といった感のある夫婦喧嘩映画だが、中国の皇帝一家の子供も巻き込んでの喧嘩だけあって、桁違いの規模だ。が、そのスケールの大きさは質よりも圧倒的な量によっており、共産主義的な映画づくり、という言葉が浮かんでくる。

宮廷の内装や衣装の過剰なゴールドやサイケなレインボーカラーは目が慣れるまでくらくらするほど、ゴン・リー演じる皇帝の妃&星の数ほどいる宮廷の女官たちのスーパー・プッシュアップされた胸の谷間、これまた無数の兵士、ワイヤーアクション全開の忍者の戦い、重陽節のために紫禁城の庭に敷き詰められた菊などが「ロード・オブ・ザ・リングス」並みの量で執拗に繰り返されるが、質も洗練度もアップしない。その一方、兵士が遠景になった途端にCGに切り替えているのがはっきり分かってしまい、いかにも予算節約した風で情けない。

物語はシェイクスピア風悲劇を狙っているが、出来上がったのは安手のメロドラマで、大画面には場違いな大げさな演技も要所要所に見られ、劇場では制作者の意図に反した失笑がところどころで巻き起こっていた。「スター・ウォーズ エピソード2」でアナキンとパドマの陳腐な場面を笑うのと同じ感覚。チョウ・ユンファ皇帝が豪華な刺繍の帯で息子を打ちすえる場面で、観客は大爆笑。ベルトでの折檻は典型的な50年代アメリカでの家庭教育の方法で、唐の皇帝一家という設定とのギャップがおかしかった、とはアメリカ人の夫の言。日本でも珍しい折檻方法ではないと思うが、たぶん笑いは起きないので、面白い文化比較だった。

相変わらず「芯の強い耐える女」を演じるゴン・リーは、皇帝の后として作品を支えており、豪華絢爛な正装より乱れ髪がいっそう美しく、珍しく悪役の皇帝チョウ・ユンファも悪くなかったが、同じチャン・イーモウ監督の「Hero」に比べて、演技も要求されている感情表現も物語も、幅と深みが狭すぎ、そのぶん量でカバーしたかのような作品。