The Host グエムル-漢江の怪物


予告編の印象と違い、怪獣ホラー映画というよりは政治的要素の方が強く、意外だった(アメリカ上映用の予告編だからかもしれない)。米軍施設が漢江に流した劇薬により、突然変異の怪獣が現れ、人々を襲う。ホルムアルデヒドの大量廃棄は2000年に実際にソウルで起きた事件で、米軍施設勤務のアメリカ人マクファーランドが韓国人部下に廃棄を命じた。当初米軍はマクファーランドの引渡しに応じなかったため、韓国政府は同氏を裁判にかけることができず、韓国人の激しい怒りを巻き起こした。

イラク侵攻批判とも取れる強烈な反米映画で、ゴジラの一作目にも似ているが、反米メッセージはより直接的で、怪獣と政治の要素が逆転している。自国に駐屯する米軍への強い反発は、日本の60-70年代の反安保デモを思わせるが、銃を取って怪獣と戦うのに躊躇がないのは徴兵制のある国ならではだ。政治デモには欠かせない火炎瓶で怪獣=アメリカを攻撃し、登場する米軍関係者は、冷戦時代の映画のソ連のような、一方的な悪者として描かれている。

怪獣がウイルスをまき散らすという設定は秀逸で、主人公家族の設定(特にとろい運動選手である末の妹)もひねりが効いていて面白い(バカ&とろいのが目覚しく働くという結末は初めから見えているにしても)が、怪獣の存在感とスリルは登場した後は下降線をたどる。攻撃規模は大型猛獣クラスにとどまり(グリズリーのように人間を一人づつ襲う)怪獣である存在意義が弱く、作品自体を弱めている。