Army of Shadows 影の軍隊


ジャン=ピエール・メルヴィル監督。1969年制作だが、アメリカでは去年初公開され、ビレッジボイス紙の2006年ランキングでは、多くの映画批評家が去年最高の映画としてあげていた。

ナチスドイツ占領下のフランスを舞台に、レジスタンス活動の闘士たちを描く。地下生活、友情、裏切り、恐怖。ナチス側だけでなく、レジスタンス側も裏切り者は許さず、拷問合戦が繰り広げられる。

前日に見たPan’s Labyrinthの方が、同じ国民同士が戦わなければならないという点ではより過酷な背景だが、こちらはファンタジーの余地などまるでない、過酷な現実だ。映像もホラー映画のように暗く重く、緊張感が持続するので、眠気を誘われるときもあるが、おいしいオヤジ顔の大集合は眠気を吹き払ってくれる。縛られるものが多いタフな男の世界を描く、昔のフランス映画と日本映画は、うまそうなオヤジの宝庫。見ていて楽しく引き込まれる感じは、Pan’s Labyrinthの方が上だったが、後に残る余韻はこちらの方が数段上。収容所に入れられ、ゲシュタポから脱走する主人公のフィリップ(リノ・ヴァンチュラ)と、有能なレジスタンスで人情家のシモーヌ・シニョレの演技が特に素晴らしい。