Black Snake Moan ブラック・スネイク・モーン

サミュエル・L・ジャクソンが淫乱クリスティーナ・リッチを鎖でつないで、ブルースとキリスト教で彼女の淫乱を折伏する話。黒人のおっさんが白人の若い女を鎖でつなぎ監禁する、という設定は思いっきりB級だが、案外まともな内容で、この二人の間にセックスは存在せず、魂の救いと癒しの物語である。

リッチと相思相愛の恋人(以外に好演のジャスティン・ティンバーレイク)が従軍してしまったため、彼女の淫乱癖が復活し、パーティーで遊んだ後、あざと傷だらけになって、ジャクソンの家の前に捨てられる。ジャクソンはリッチを拾い、彼女を心身ともに更正させようとする。この二人の演技はうまく、ジャクソンもしっかり南部のブルースマンに見える。が、予想よりきちんとしている、という点が作品にとってプラスになっているかどうかは疑問。設定に負けないぐらもっとぶっとんだ内容で(50年代のBムービーのように、教訓が言い訳のように後から付け足されているような)その上でまともさを感じさせる方が面白いのに。

ブルースマンのジャクソンが弾き語りをしながら、リッチの淫乱心を追い出す、というのは、黒人奴隷の魂の嘆きから発生したブルースの起源を感じさせて興味深い。英語では邪悪な心のことをinner demon(内面の悪魔)と表現し、まさにジャクソンはブルースを歌って、お払いをしたわけ。それと同時に、若い白人女に対する欲情も吹き飛ばして、同年代の信仰心厚い黒人女性と仲良くなる。男にはブルースを通じての欲望の表現が許されているが、女の欲望は男によって折伏されておしまい、というのは疑問だが。

リッチが白いパンツ(パンティーではなくパンツと呼びたい)と露出度の近いTシャツだけで道端に放り出されても凍死しない。レディらしい格好をさせようと、ジャクソンがきちんとした洋服を買ってくるが、スーツなんかではなく、花柄のミニのスリップドレスで、背中もばっちり開いている。ブルースもそうだが、南部の蒸し暑い感じが良く出ていて面白かった。

サミュエル・L・ジャクソンといえば、日本のアニメ「アフロサムライ」のプロデュースと主人公の声の出演も行っている。ケーブル局のSpike TVで放映され話題になり、実写映画化も計画されている。アニメは少し前に一話見ただけで、細かいことは忘れてしまったが、未消化のままの情報が過剰なアクションは、勢いよりも眠気を感じさせた。