週末ヨガ・リトリート


ストレスがたまってきたので、先週末、NY郊外にあるAnanda Ashram (http://www.anandaashram.org)に行き、ヨガと瞑想をして過ごした。ヨガ・リトリートにもピンからキリまであって、贅沢なリゾート地で行われるものもあるが、これは二段ベッドを二つ入れた部屋で一泊65ドルという破格の安さだけあって、良くも悪くもゆるい。この値段には三食だけでなく、一時間半のヨガ二回、朝と夜の瞑想、ヨガ関連の講演やイベント、サンスクリット教室などが含まれている。

食事はベジタリアン(乳製品可/不可の二種)で、昼間が一番量が多い。ミネストローネ、セイタンとマッシュルームのケチャップ&たまり醤油いため、ズッキーニ、カリフラワー、にんじんなど沢山野菜の入った炒め物、キノアと野菜、ビーツとにんじんのサラダ、ご飯とパン数種。朝は手製のシリアルやオートミール、マフインに果物、夜はキャロットケーキなどのデザートがつくこともある。どれもおいしかった。

夕食は5時から6時までで、その後瞑想と講義などのイベントがある。最初の夕食のメインは野菜ラザニアで、豆類しかたんぱく質がなかった。普段は菜食と肉食適度に混ぜた食生活なので、一食ぐらいどうってことないはずだが、それしか選択肢がないという心理的なプレッシャーのためか、食後すぐにお腹がすいて、瞑想どころでなかった。チャンティングの声も弱々しく、瞑想しようとしても「肉食わせろ」との言葉が渦巻いてしまう。講演は長い割にはピンと来なくて疲れた。普段は宵っ張りなのに、同室の人に電気を消されたこともあり11時に寝た。

二日目には食べ物にも環境にも慣れて、いろいろ楽になった。二段ベッドの上り下りも慣れた(上段で寝たが、梯子がないので怖かった)。タオルや食器は、この値段なら当然と思われる、99セントショップ並みの品質だが、シャワーはきちんと浴びられるし、ヨガのプロップが安物でも、ちゃんと機能するので問題なし。ルームメイト暮らしやチープな一人旅をするのは久しぶりだが、まだまだ適応能力があることを発見してうれしい。

一日目は欲張りすぎたので、二日目はのんびり目に過ごした。6時半に起きてシャワー、7時ヨガ、8時半朝食、9時チャンティング&瞑想、11時マッサージ。マッサージをしてくれる女性(インド系?)のヨガ・ネームはクリシュナで、宿舎のロビーには「マッサージはクリシュナに電話してね」と書いてあるのが、ヨガ系エロ電話のようでおかしい。指圧とスウェーデッシュのコンビで一時間たっぷり揉んでくれ、ベッドも暖かくてうとうと。初めてのスパでリラックスできることはまずないから、これは大成功。サウナまでついて、たったの80ドル。マンハッタンだったら1.5倍はする。まだ冬用のコートが要る気温だが、体の中までほかほかになった。昼食後は湖を見ながら、陽だまりの中を寝そべって読書。妻に連れてこられたらしい夫たちは「ビールはどこだ」と冗談を言っていた。ここでは、アルコールは禁止されている。

湖は小さいが島もあり、湖の裏は林になっていて、ハイキングコースもある。ちょっと歩きかけたが、あまりにも人気がないので、少しだけでやめた。緑の季節に来たら、人は多いだろうけれど気持ちいいだろうな。一日中、屋外で過ごせたら最高だ。物書きにもいいだろう。3時からは瞑想とヨガ、その後夕食、また瞑想で夜の講演は参加せずに、部屋で読書。

三日目は朝のヨガ、朝食と瞑想の後帰った。瞑想の前に行われる火のセレモニーは、暖炉の前のお椀の中で火を燃やす。戸外でキャンプファイヤーを燃やして輪になって歌うという、「ウィッカーマン」のようなカルト的光景を想像したが、違った。ハルモニウム(リードオルガン)の伴奏でサンスクリット語のチャンティングを行う間、火が燃やされ、瞑想の間も燃えている。瞑想は普通目を閉じて行うが、静かに生き生きと、とどまることなく、寄せて返す波のように燃えている炎をじっと見ていた。そのうち起きているのか寝ているのかよく分からなくなってきたが、心の中に炎の絵をしっかり焼き付けた。家に帰ってから瞑想してみると、マントラと呼吸法だけよりも瞑想しやすく、思わぬ収穫だった。

娑婆への帰還は、サッポロ黒生とラーメンで祝った。心身をリフレッシュさせる目的は十分達することができて、家でも仕事でも多少余裕を持てるようになった。夏の平日にまた行ってみたい。マンハッタンからバスで約一時間、バス停からはタクシーも出ていて、車がなくても気軽に行けるのも魅力だ。
#カメラを持っていかなかったので、写真は絵葉書から。