The Future is Unwritten

ジュリアン・テンプル監督による、ジョー・ストラマーについてのドキュメンタリー(邦題LONDON CALLING/ザ・ライフ・オブ・ジョー・ストラマー)。セックス・ピストルズを描き、ピストルズ同様に刺激的だった、同監督のThe Filth and the Furyより、むらのある出来。

クラッシュ以前のバンドThe 101ersの、荒っぽい労働者階級の町での騒然としたギグの様子を落書きアニメだけで再現したり、とユーモアある出だし。クラッシュはNYパンクと違ってユーモアなしのシリアスなバンドだから(真面目すぎる、とデイブ・リー・ロスにからかわれている)その意外性が面白い。

が、クラッシュの歴史が始まると、真面目な調子になる。歌詞のメモの山からは、ストラマーがシリアスなアーティストであることが伝わってくる。当時のライブ映像を普通に見せていくだけで、政治と社会問題に熱くコミットしたバンドだけあって、その当時の空気が浮かび上がってくる。ノンポリでいつも同じ格好、バンド=仕事のラモーンズと比べると対照的だ。

クラッシュではなく、ストラマーのドキュメンタリーだからか、クラッシュの演奏の映像が意図的に少なかった気がするのが残念。レアな映像ばかりつなげてあって(ストラマーの声の出演もあり)どちらかというとマニア向け。まあ、クラッシュ解散後もストラマーの人生は15年以上続くわけで、映画もそれを追っていく(解散直後の娘二人との姿が、ロックスターだけであるよりもセクシーに見える)。クラッシュの亡霊に悩まされ、クラッシュ抜きの自己の追及から彼の死までが描かれるが、ソロのキャリアは、その後のロックに絶大な影響を与えたクラッシュの音楽には及ばなかったのと同様、面白くない。でも、これが人生かもしれない。

友人や家族、ボノ、ジム・ジャームッシュ、ジョニー・デップら有名人がストラマーについて語るが、意外なエピソードや目の前に浮かんでくるような逸話がない。唯一面白かったのは、ジャームッシュの「ミステリー・トレイン」で競演したスティーブ・ブシェミが緊張しまくり、ブシェミがビリヤード台脇のストラマーを遠慮がちにつかんで、隣の部屋に連れて行くクリップが示される場面。ラストに出てくるグラフィティは私の家の近所、イーストビレッジにある(写真中央。右もイーストビレッジ)。