I Am Legend アイ・アム・レジェンド


ゾンビになるウィルスに世界中がおかされ、NYでの生き残りは科学者で軍人であるロバート・ネビル(ウィル・スミス)だけになってしまう。世界のどこかに生存者がいるのでは、と唯一の話し相手となったジャーマン・シェパードのサムを連れて、昼間は街に出かけ、夜はゾンビの襲撃を避け、家でウィルスの治療の研究を続ける毎日だ。

ネビルの孤独な毎日を描く前半はウィル・スミスの魅力が発揮され、回想場面以外に人が出てこなくても充分間が持ち、彼の寂しさがよく伝わってくる。が、作品の3分の2ほどの時点で起こる犬との物語の方が、作品が意図した人間との山場よりもインパクトが強い(家族の一員としてペットを飼っている人なら、同感してくれると思う)。表情豊かな犬との物語は確かに感動的だが、映画は基本的には人間の物語で、人間以外のものも人間の比喩として描かれるわけだから、動物そのもので感動を誘うのはずるい気がする。そこから終わりまでは、魅力あるスミスには不必要な、ポップカルチャーからの引用(最近のハリウッド映画の弊害)や不器用なロマンチックコメディ的要素など、時間切れを気にするかのように中途半端な要素をぼんぼんぶち込んだ、尻すぼみの下手な展開だ。

世界がウィルスに侵されてから3年後の、荒れたマンハッタンを描く特殊効果は素晴らしい(CGゾンビは感心しない)。本家アメリカではつぶれた無人タワーレコードからCDを持っていくのも、哀しさを倍増する。妻子も世界中の人々も死に絶え、神を信じなくなったネビルが、ヒロイックな決意により伝説となるわけだが、展開が下手くそなので、彼一人だけだったらゾンビの襲撃に対するリスクが少ないのに、他人がかかわると危険性が増える、という作品の意図に反したメッセージが感じられてしまう。