Harold & Kumar Escape from Guantanamo Bay


カルト的人気を博した2004年のコメディ「Harold & Kumar Go to White Castle」の続編が4月25日から公開中だ。前作は、ニュージャージーに住むルームメイト二人が、金曜夜にマリファナでハイになってから、ハンバーガーを食べに行くだけの話だが、ついに食欲を満たすまでに、あまりにも馬鹿馬鹿しい冒険とギャグが満載されているご機嫌な作品だった。何より新鮮だったのが、主人公二人が韓国系のハロルドとインド系のクマーという、マイノリティーでもさらに少数派というか、普通ハリウッド映画に取り上げられない(日本では絶対公開されないだろう)人種の俳優であること。人種ネタのギャグが過激に盛り込まれる一方、下ネタ&ドラッグがらみのジョークもてんこ盛りという、ハイ&ロー・ブロウのギャグが好きな私のような観客にとってはたまらない作品。主人公二人とも全然タイプは違うが、それぞれ好感が持てるし、両者とも馬鹿じゃないのもポイント高い(お人よしチャプリンより、詐欺師マルクス兄弟のほうが好きなのだ)。
前置きが長くなったが、新作は一作目の新鮮さはないものの、十分楽しめた。リチャード・リンクレーターの「Dazed and Confused」など他のドラッグでハイになる映画と違い、実際にマリファナを吸わなくてもアッパーになれるのも前作と変わらない。一作目の冒険が終わり、アパートでハロルドがシャワーを浴びているところから始まる、本作のギャグのパターンは前作とほぼ一緒だ。ハロルドが好きな女の子を追いかけて、マリファナの都アムステルダムまで行くはずが、クマーがアラブ系&ハロルドは北朝鮮のテロリストに間違えられ、二人ともグアンタナモ刑務所に送られ、脱出を図るという筋。話の規模は広がっているが、パターンは人種差別的な役人、動物、ウィーディ(人間大の袋に詰められたマリファナで、クマーの空想上の恋人)、ニール・パトリック・ハリス、森の中の一軒家などのギャグも共通している。評論家にはおおむね評判が悪いが、一作目で彼らの魅力にやられたファンには文句なく楽しめる。
ジョークは強烈さを増している部分もあるが、前作より単純で直接的だ。前作では、White Castleというマックでもバーガーキングでもない、よりジャンキーでビミョーな味のニッチでマイノリティなバーガー(写真参照。マンハッタンでは上野駅を連想させるペン駅周辺にしかなく、店内の95%は黒人といったら、なんとなく分かってもらえるだろうか。肉よりもマッシュルーム(?)と玉ネギの味が強い)を追い求めるこだわりは、マリファナを求める心と重なり合い、二重のguilty pleasure(罪悪感があるからこその喜び)な世界を描いていた。本作にはその複雑さはないものの、マリファナを吸うことの意味について、直接考えさせられる。ハロルド&クマーがそれぞれのスイートハートを追いかける物語で、マリファナはセックスと重ねられる。頭は良いがだらしなく、理不尽な行動をとるクマーだけでなく、整理整頓好きでいかにも人のいい好男子タイプのハロルドも、誰だってハイになる! セックスだって実は大好きだ。二人の馬鹿馬鹿しさから伝わってくるのは、何ともいえない自由な楽しさだ。前作では見終わった後に猛烈にWhite Castleが食べたくなり、本作ではマリファナが吸いたくなる。全ての男にはおたくで精神的なホモの部分があるということに訴えて人気を呼んでいるジャド・アパトウのコメディ−全盛のここ数年、それらとは異なるテイストで、男二人の友情を描いたコメディは新鮮でもある。また、人種問題以外の政治的要素を盛り込んだように見える設定だが、その手のギャグを期待して見に行くと失望するだろう。