Gomorrahゴモラ


ナポリを拠点とし、シチリア・マフィアほど知られてはいないが、収入は年2500億ドルとも言われる、イタリア最大の犯罪組織カモッラが、いかにナポリ市民の日常生活だけでなく世界と結びついているかを事実に基づいて描く。ロベルト・サヴィアーノによる同名ベストセラーの映画化で、2008年カンヌのグランプリ受賞作。スコセッシが非常に気に入っている作品でもあり、アメリカでの上映には「Martin Scorsese Presents」のクレジットが冒頭に付けられた。サヴィアーノは本が出版されてから潜伏生活を送っているということで、非常に衝撃的な内容を期待したのだが失望した。
ナポリ低所得者用団地を中心に、カモッラのために働く人々の姿が並行して描かれる。有害物質の不法廃棄による農地汚染。有名デザイナーのデザインをコピーし、発展途上国のようなスウェットショップ工場で生産。麻薬。上納金の運び屋。団地に育ち、カモッラに入るティーンエイジャーの少年。そして最後には、カモッラがワールドトレードセンターの再建に投資していることが明らかにされる。
役者たちは演技がうまいわけではなく、ゴッドファーザーのようなエキサイティングな殺しも、ヤクザ映画のノーブルな仁義もない。ヒーローもアンチヒーローもいない。犠牲者だけだ。まだカモッラの奴隷になりきっていないために、唯一生き生きとしている少年たちは、育った状況を考慮してもアホすぎて好感が持てない。作品中に流れる趣味の悪いイタリアンポップ(?)も含めて、これがリアルな現実に近いのだろうが、乾きすぎていて、かえって現実味がない。私は超ドライなギャング映画が大好きだが、ゴミのような人々しか出てこないドライさは、身につまされることなしにしんどい。