2009年ベスト



1.Katyn カチン

カチンの森の虐殺とソ連によるその揉み消しを描いた、アンジェイ・ワイダ渾身の力作。
http://d.hatena.ne.jp/djmomo/20090424#1240534030

2.The White Ribbon
2.Broken Embraces
ミヒャエル・ハネケペドロ・アルモドバルという、物語の語り方を知っているヨーロッパのベテランの新作は安心して興奮しながら見られるが、彼らの最高傑作ではない。ハネケの「White Ribbon」は、ナチズムの土壌になったと示唆されている、田舎の村での子供に対する虐待及び子供たちによる暴力と白黒画像の美しさとの対象が印象的。映画作りについての映画であるアルモドバルの「Broken Embraces」は、記憶とその曖昧さや、映画と実人生の関係をも切なく描く。ペネロペ・クルスは、今一番美しい女優ではないだろうか。

4.District 9 第9地区

明らかにアパルトヘイトの比喩でありながら、確信犯的に政治性を避けた、知性派のための出来の良いポップコーンSF映画。どちらかといえば嫌な感じの官僚がヒーローというのも新鮮。

5.Star Trek スター・トレック

トレッキーには評判悪いが、私のような非トレッキーには評判が良い。カークが船長になるまでを描き、若きスポックが美しい。「ロスト」のJ・J・エイブラムス演出にしては、知的な展開が多少足りないが、オリジナルのテレビシリーズと現在をつなぐ歴史感覚はしっかり押さえている。

6.Where the Wild Things Are
子供には勧められない映画。

6.トウキョウソナタ
日常生活の居心地悪さが映画的に巧みに表現されていた、おそらく黒沢清の最高作品。ホームドラマのようでありながらホームドラマでなく、でもやっぱりホームドラマでもある不思議さ。

8.Zombieland 
見た後何も残らないが、楽しめるゾンビ物コメディ。ビル・マーレイカメオ出演が美味しい。

8.Hurt Lockerハート・ロッカー

イラクの米軍爆弾処理班を描く。感情の書き込み度が題材の興味深さに比べてやや物足りないものの、爆弾処理の場面はスリル満点。
http://d.hatena.ne.jp/djmomo/20090813#1250123347

10. In the Loop
芸術の域に達した罵倒コメディ。
http://d.hatena.ne.jp/djmomo/20090815#1250294601

10.Valentino : The Last Emperor

2007年の最後のコレクションにいたる2年間のヴァレンティノを追ったドキュメンタリー。無理に物語を作ろうとしておらず、表層的ではあるが、プライベートジェットの中にまで入り込んだ密着撮影からは、デザイナーの内面が少しずつ見えてくる。執事の視点で描かれた特典映像も見逃せない。世界中の別荘でヴァレンティノが開く、セレブを招いての豪華パーティーに先回りしてのセッティングや、スイスの別荘では5匹のパグに揃いのセーターを着せて雪の中を散歩させる。

番外
以下の3作は、それぞれ別の理由で映画とは言いがたいがインパクトがあった。
The Cove ザ・コーヴ
太地のイルカ漁に反対する、反捕鯨団体によるプロパガンダ映画だが、よく出来ていて、オバマと駐米大使にイルカ保護を訴える手紙に思わず署名してしまった。
http://d.hatena.ne.jp/djmomo/20090829#1251517429

Paranormal Activity パラノーマル・アクティビティ

全米でヒットした、疑似ドキュメンタリー仕立ての超低予算映画。Youtubeビデオを思わせるリアルさが恐怖をあおる。頭の良い製作者だ。

This Is It

マイケルが急死したために、DVDの本編がなくて、特典映像のみで出来たような作品だが、それゆえに、画面に存在しないマイケルに思いをはせることを強いられ、意図せずに深みのある作品となった。偉大なアーティストの最後の仕上げのような。

ワースト:
「Antichrist」
ラース・フォン・トリアーの新作。

「Black Dynamite」
黒人が主人公の70年代B級カンフー映画へのオマージュで、サンダンスで話題になったが、ニューヨークでの劇場公開は2週間ほどで立ち消えに。意図したわけではない当時のBな魅力を意図的に再現しようとするのは難しい。

崖の上のポニョ
脳死

旧作上映

ベティ・ブープ @ Loews Jersey
http://d.hatena.ne.jp/djmomo/20090621#1245595104

「サイコ」深夜上映@Sunshine
マンハッタンのアートシアター系映画館では最高の設備を誇る、ロウワーイーストサイドのサンシャインでは、週末の夜12時から名作やカルト作品を上映。バーナード・ハーマンを良い音響で聴けて満足。有名なシャワー場面は、未だに映画史上最も怖い場面だと思う。

狼たちの午後@ Bryant Park
毎年夏、ミッドタウンのオフィス街の中にあるブライアントパークでは、日没後に名作上映を行っている。ブルックリンの夏が舞台のこの作品を、たくさんのニューヨーカーと見られてうれしい。ゲイ擁護の場面では観客から歓声も。

大島渚回顧上映@ BAM
前から見たかった「絞死刑」「新宿泥棒日記」「日本春歌考」など、「愛のコリーダ」以前の作品がまとめて見れた。荒木一郎の魅力を再発見。

温泉芸者シリーズのDVD化もうれしかった。芸者姿でバイクにまたがる「温泉スッポン芸者」の杉本美樹が最高! 山城新伍のギャグも冴えまくる。