NYランチ屋台事情

NYで働く人々にとって欠かせないのが、lunch cartと呼ばれるランチ屋台である。ここ5年ほどで、チキンをライスにのせたハラールフードの屋台が増えた。バングラデシュやエジプト移民などイスラム教徒の増加のためで、NY名物のホットドッグスタンドと数が逆転した地域さえある。ハラールフード(Halal Food)とは本来、豚肉やアルコールを使用しない、イスラム教の戒律に従った食べ物全般を指す。が、ニューヨークの屋台では、ライスの上にサイコロ状の鳥ももかジャイロという羊肉(カバブ)をどっかり乗せ、短冊状のレタスとホットソース、ホワイトソース (マヨやヨーグルトベースらしき、白い謎のソース)をかけたもので、安くて量が多く美味しいランチを食べたい非イスラム教徒にも愛されている。日本人が多いミッドタウンのオフィスビルには、日系のケータリングサービスが弁当を売りに来るが、私は屋台で買って、天気が許せば外で食べることが多い。

「Kwik Meal」は他のハラール屋台に比べて1ドルほど高いが、肉も野菜も調理の仕方も洗練されていて、Vendy Awardsと呼ばれる屋台の賞も受賞している。写真のチキンオーバーライス(6ドル)は、アメリカ人のチキン好きを反映してか、どこのハラール屋台でもおそらく一番人気のメニュー。ラム肉版もある。白く細いバスマティ米か、やや大きめの粒のイエローライスに、香ばしいスパイスを効かせて鉄板でいためたモモ肉をのせる。脂っこい肉にかりかりした皮がたまらない。皮のぱりっとした鮭や、野菜だけ載せたのもおいしい。ファラフェル・オン・ピタ(Falafel on Pita)はひよこ豆のコロッケをピタパンにはさんだサンドイッチで、ホワイトソースかホットソースをかける。ここのピタパンは焼きたてのナンやクレープを思わせる香ばしいバターの香りがして、リッチな味わい。4.5ドル。

 
 

「El Rey Del Sabor」メキシカン:スパイシーなチョリソや、ビーフ、べジ、チキンなどのタコスは、ソフトなトルティーヤを鉄板で焼いてから具を載せる。新鮮なシラントロが沢山入って、味も触感も香りも満足させてくれる。ベジはメキシカンライスやトマト入りで食べ応えあり。マイルドでもかなり辛めの、ビールが飲みたくなる味で、天気の良い日にはつい足が向う。写真のFlautasは、タコスと同じトルティーヤの中にチーズなどの具をつめて揚げた料理。不思議と脂っこくない。

 
 

「Jerk Pan」:甘辛くスパイスをきかせたジャマイカンフードの屋台は、マンハッタンでは比較的新顔。ジャークチキン、カレーチキン、フライドチキン、オックステイル、brown stewed chickenの内一つをライス&ビーンズにのせたミニ(6ドル)でランチには十分。2ドルほど追加すると肉大目&蒸野菜や揚げたプランテーンなどの副菜がついてくる。チキン&かぼちゃ、ヤギなど日替わりのスープも美味しい。

フライドチキンといえば、コリアンタウンでは数年前から、韓国から上陸したフライドチキン・チェーンが流行っている。人気店の一つKyoChonに行ってみたが、KFCよりはやや上のジャンキーな味で、あまり感心しなかったが、周囲のアメリカ人たちは、大皿山盛りのチキンに嬉々として喰らいついていた。新顔といえば、穀物飼料の代わりに無農薬の牧草で育てた牛を使ったハンバーガーや、ウィンナーシュニッツェルなどの屋台も最近人気。新し目の屋台は日替わりで場所を移動することもあり、その情報やメニューのスペシャルなどをtwitterにのせている。

ステーキトラック:ハンバーガーやチキンサンドイッチ(3.99ドル)などのアメリカンフードが中心だが、ハラールフード人気は無視できないと見え、最近のホットドッグ屋台同様に、チキンオーバーライスやファラフェル・サンドイッチも売っている。が、ハラールフードとはうたっていないので、イスラム教徒らしき人々は見かけない。注文してから揚げる熱々のチキンカツサンドや、薄切り牛肉と玉ねぎを鉄板でいためて、溶けるチーズをかけたフィリーチーズステーキサンドイッチ(3.99ドル)が美味しい。この屋台は以前メニューが多かったが、品数を絞り、価格を安くして、激しいランチ競争に対応している。ここはなぜか、値段と味の割に行列ができないが、通常は行列のできている屋台を選べば失敗はない。味がいま一つな場合もあるが、値段を考えると納得できる。

手頃で美味しい店が少ないという定評のNYミッドタウンのランチ事情を取材している、利用価値の高い人気ブログ。http://midtownlunch.com/
http://www.nytimes.com/2007/07/29/nyregion/thecity/29hala.html?_r=1&ref=thecity