「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」


ハリポタ映画の中で一番出来がよく、動く絵本でなく映画として大いに楽しめる、シリーズ最後にふさわしい優れた作品である。長くもったりした、いかにもクライマックス前の布石といったPART1と異なり、速いテンポで次々と多くの出来事が起こり、アクションも満載で、はらはらドキドキの連続だった。冗長なセリフや詳細を巧みにカットし、矢継ぎ早のアクションやジョークでうまくつなげている。公開初日夜の劇場はもちろん満員。マンハッタンの劇場の一部ではすでに前日から真夜中まで売り切れとなり、あわててブルックリンの劇場で前売りを買った。ノリノリの観客は、悪者が魔法で倒されるたびに歓声を上げ、007映画を見ているかのような盛り上がりだった。


アラン・リックマンレイフ・ファインズマギー・スミスジョン・ハートなどの名優たちに、やっと見せ場をきちんと与えたのも、映画として質が高くなった理由である。特に、スネイプ(リックマン)が本当はどちらの側についているのかという秘密が明かされる場面では涙があふれた。抑え目で謎めいた演技でシリーズ中通しただけに非常に効果的だった。一方で、今は戦いの時だ!というわけで、前作までのように、ハリーたちのいかにもティーンエイジャーなロマンスや葛藤にいらっとすることもなく、アクションあるのみだ。ホグワーツを舞台にした最後の戦いは、多くの魔法使い同士が杖で戦い合うだけでなく、石でできた守備兵や巨人なども参加し、変化に富んでいる。CGも秀逸。2Dで見たが、3Dである必要は殆どない。


最後のエピローグも、次世代につながるという意味では、子供たちの姿が実際に見えるだけあって、原作より効果的だった。テンポの良さとまとまりから、少なくとも原作を読んだ観客にとっては、原作よりも優れていると感じた。


以下はリックマンについての米批評家の言葉。
ニューヨーク・タイムズ「スネイプが、ローレンス・オリビエのリチャード3世を思わせるほど素晴らしい映画のキャラクターになったのは原作者のせいもあるが、主としてリックマンのおかげである。リックマンは、善悪についての童話を人間の葛藤の物語に高めた」


LAタイムズ「物語の最後にしばしば必要とされる、感動をもたらすための優れた演技は満足感を与えてくれる。数多くの役者が優れた演技を見せるが、最も印象に残るのは常に、とらえどころのないスネイプを演じるリックマンだ」


エンターテイメント・ウィークリー「悲劇的で謎めいたスネイプはハリーの運命を巡る重要人物の一人となる。神秘的で凝縮された力強いリックマンの演技により、スネイプのキャラクターは鮮やかに確立され、バイロン卿のような黒髪とマントのシルエットだけでも観客が即反応するほどだ」


リックマンは今シーズン、ブロードウェイの芝居に主演することが決まっている。テレサ・レベック作のブラックコメディ「セミナー」で、若手作家に講義する伝説の作家を演じる。劇場と日程は未定だが、決まり次第切符を取らなきゃ。この映画の後ではすぐに売り切れになるだろう。