年末年始,マルクス兄弟,Good Shepherd,隠された十字架


あけましておめでとうございます。

年末年始はつきあいの他に、家で翻訳の仕事など案外忙しく、映画館には殆ど行けなかった。2日から仕事。

クリスマスは夫と義理の母と、チャイナタウンに飲茶に行った以外は、静かに過ごす。鉄鍋で作ってみたミートローフと、チャイナタウンでつるして売っていたローストチキン、久しぶりに作ったブラウニーが美味しかった。客をもてなし、ごちそうを作るのはストレスにもなるが、普段食べない美味しいものを作る機会と思って、楽しんでしまうに限る。

晦日の夜は、ロウアーイーストサイドで即興&実験音楽のシリーズを毎週開催しているスペース、ABC No Rioでのセッションに参加。皆でいっせいにカウントダウンするのも楽しいけど、適当に年が明けて淡々と演奏し続けながら、おめでとうを言い合うのも悪くない。

元旦の夜は、ミュージシャン仲間のホームーパーティーでブルックリンへ。おせちに餅、手巻き寿司など、次から次へと魔法のように出てくる。友人は料理担当で、その妻は昨年生まれた赤ちゃんの育児担当。

マルクス兄弟のビデオをまとめて見る。「A Day at the Races」 「Duck Soup 」「Monkey Business」 「Animal Crackers」。映画ができてから70年ほどたっているのに、彼らのギャグを真似せずにはいられない面白さ。夫と一緒に、チコのピアノの弾き方を真似したり、ありものでハーポの格好をしてリコーダーを吹く。ミュージカル場面は単独では古臭くても、ニューヨーク育ちの兄弟が出てくると途端に、当時の最先端だったヒップな雰囲気が伝わってくる。明らかにスターなのはグルーチョとハーポ(I Love Harpo!)だが、見ているうちに、全くタイプの違う二人を橋渡しするチコのうまさが際立ってくる。

デ・ニーロ監督、マット・デイモン主演の「The Good Shepherd」。アメリカを守るという任務に忠実なため、家庭生活は不幸なCIAエージェントを通して、初期CIAの歴史を描く作品のはずだが、キューバ危機やケネディなどの出来事や名前をぱらぱら散りばめているだけで、歴史のセンスは感じられず、2時間47分といたずらに長い。アンジェリーナ・ジョリーとデ・ニーロも主演のように宣伝しているが、そのつもりで見ると出番が少なくがっかり。演技の幅も限られている。

日出処の天子」を読み返していたら、もっと聖徳太子について知りたくなり、梅原猛の「隠された十字架」を読んだ。法隆寺は太子の祟りを鎮めるための寺、という主張自体は、山岸涼子の漫画を読んだ後では驚かされず、繰り返しがくどく、反復するごとに推定が断定に近くなったり、表現がやや主観的に過ぎる箇所もあり、水ももらさぬ緻密な論理構築ではない。が、直感も含めた著者の資料読み込み能力は高く、歴史が生き生きと伝わってきて、推理小説のようにぐいぐい読ませる。もちろん「日出処の天子」のネタ本としても面白い。

古代日本では、A民族がB民族を征服すると、AはBの祟りを恐れ、Bの祖先神やシンボル神を祭っていた。仏教を信じた太子の死霊を鎮めるために、仏教も死にかかわるようになり、明治時代からの国家神道では、完全に神道と死は切り離されるようになってしまった。例えば、ローマ帝国が征服した国にいくら寛容でも、彼らの宗教の維持を認めるくらいで、征服した国の宗教を採用する例はないと思う。日本は面白い国だ。去年、友人の結婚式に行ったとき以来、なんで神道の葬式や仏式の結婚式がないのか、不思議に思っていたので、死を扱わず現世利益だけの宗教は完全ではない、という著者の主張にはうなずける。

クリスマスにiPod nanoをもらい、早速梶芽衣子ラモーンズ、キッス、カン、セルジュ・ゲーンズブールを入れた。私はオタクなミーハー。