ビデオ日記など

 
 

処女ゲバゲバ:ラス・メイヤー+「エル・トポ」みたいな、シュールなエロと暴力で、ファンタジーや政治的要素もある不思議な、若松孝二の初期の佳作。

Lorna : ラス・メイヤー。Faster, Pussycat! Kill! Kill!より1年前の1964年作品だが、エロと暴力を見せるための、こじつけてきな道徳的な終わり方のパロディなど、50年代の匂いはこちらのほうが強い。音楽の使い方がユーモラス。

ビジターQ : 三池崇史はそんなに好きな監督ではないが、この変態ホームドラマは面白かった。不条理とロジックと感情が分かちがたく結びついている。家庭に突然現れる訪問者、という設定は、パゾリーニの「テオレマ」を彷彿とさせるが、家庭を崩壊するのでなく、第三者としてセラピストの役割を果たす。

お熱いのがお好き:久々にモンローの作品を見直した。きれいでセクシーな女優は他にもいるが、開いた口がふさがらず、目を見開き、よだれがたれっぱなしになるほどきれいな女優は他にいない。

現代やくざ 人斬り与太: 渚まゆみ

裏窓: ヒッチコックの中で一番好きな作品かも。引きこもりのおたくとも見れる善人ジミー・スチュワートがのぞき病を感染させていく様も、結婚生活の考察としても、まったく古くなっていない。

俺にさわると危ないぜ: 鈴木清順のADだった長谷部安春の監督デビュー作。「東京流れ者」と同じ1966年作で、雰囲気も良く似ている。「流れ者」よりさらにアイキャッチーな映像で、山本直純の音楽も旭もいかしてるが、作品全体の勢いは「流れ者」より弱い。

キュア: 実存的に背筋の凍る怖さ。

乾いた花:ヌーヴェルバーグやくざ映画。主演の加賀まりこは、日本でいちばんアンナ・カリーナに近いところにいた、と思う(ロリータ版だが)。篠田正浩監督、武満徹高橋悠治音楽。

ブルジョワジーの密かな愉しみ :非常に演劇的な、でも究極的には映画的な作品。

Heaven and Hell : 石井輝男の「地獄」と「オペレッタ狸御殿」「ベルリン天使の詩」を足して、「ウエストサイドストーリー」の振付けと歌、ドイツ表現主義と60年代後期日活のデザインをスパイスに使った、ショウ・ブラザース制作の超カルトなカンフー映画で、一見の価値あり。地獄めぐりの風景は、石井版「地獄」よりさらに想像力に富んでいるが、後半はカンフー場面がやたらに多く、だれ気味。

フィッツカラルド : 映像、音楽もそれらの融合も素晴らしく、2時間半を長いと思わせないが、手放しでほめられない引っかかりを感じた。ペルーのジャングルで、現地人を使って船を山越えさせるフィッツカラルドの姿は、ヴェルナー・ヘルツォーク監督と重なる。制作に3年以上かかり、エキストラは5000人、俳優組合に入っているとも思えない現地エキストラの賃金や労働条件における搾取が想像できる。作品のテーマは、気違いじみた夢を実現させようとする男の姿で、植民地における搾取ではないが、皮肉な一致にあまりにも無神経なように見える。

流れる:山田五十鈴田中絹代高峰秀子杉村春子、栗島すみ子、芸者見習いの少女たち、と様々な年代&タイプの女の有機的な図鑑を見ているような傑作。

ストーカー:10数年ぶりに見たタルコフスキー。金太郎飴のように、どこを切ってもアートハウスな映像が非常に美しいが、スローなテンポと「芸術」志向は眠りを誘う。水滴や電車の音など、ステレオやサラウンド効果を駆使したクリスプなサウンドデザインはてらいも気にならず、ただ素晴らしい。

ロミオとジュリエット:セントラルパークで毎年夏開催される、パブリック・シアター制作によるシェイクスピア・フェスティバルの第一弾。野外劇場の背後には、池と中世の城のような建物と緑がひろがり、蛍が飛び、うまいこと鳥が飛び立つジョン・ウー効果も味わえる。並ばなくてはいけないが、切符は無料。演出は「レント」のマイケル・グライフ。金属の棒をブロック状に組み立てた、ドラマに奥行きと階層を与える、演出家特有のセットのバリエーションとして、真ん中から分離可能なアーチ橋が使われているが、人物像は平面的。ロミオは三枚目でゲイっぽい(断然カリスマ性のあるマキューシオとつるんでる方がうれしそう。マキューシオのほうが、おいしい役であるにしても)。一幕目はクリフスノート(アメリカの大学の授業には欠かせない、文学作品のあらすじをまとめたアンチョコ的参考書)で、二幕目は永遠だった。
周囲の状況や偶然によって起こる悲劇だが、ロミオとジュリエットの恋の熱が伝わってこないせいもあり、周囲の助けなしには恋もできない子供の話に見える。子供だから恋に落ち、でも愚かなのは周りの大人たちも同様、という、シェイクスピアのことだから、そういう意図を含んでいたのかもしれないが、感情移入なしにはしんどい、ダウナーな舞台。プレビュー中なので、主演の相性はこれから良くなるかもしれないが。